たかなべ

打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?のたかなべのレビュー・感想・評価

4.5
夏にアニメ映画になると聞いて、そうだ、DVD持ってたな!って押し入れから10年ぶりぐらいに引っ張り出したら、中身が入ってなかった! まさか10年も手元になかったことに気づいてないなんて…。

で、しょんぼりしてたら、AmazonPrimeVideoで配信してくれて、ラッキー!ってなった。

通算10回ぐらいは見たことになるんじゃないかなぁ。

今見ると、デジタルカメラで撮ったっぽいジャギとか色味とか、やたらカメラ目線演出が多いこととか、案外棒読みな奥菜恵の演技がしばらく気になるけど、50分に満たない短い物語りでありながら、ヴォーカル曲が流れる何度かのクライマックスでは、まんまと泣かされる感じに持っていかれる。

奥菜恵が棒読みっぽいって言ったけど、全体を通してみると、小学生ながら背伸びしている女の子を演じていると言えば、そのようにも見えるし、太めの眉毛とか、子供に思われないようにするような発声の仕方とか、女性らしさにはまだしばらく届かない、でももしかしたら明日には違うかもしれないっていう子供体型とか、それでいてどこか長澤まさみにも似ている強い眼差しと、それを支える子供らしいひと夏の妄想といたずら、それに振り回される全く脱皮の気配を見せない子供な俺たち、に、ぐっと来てしまう。

テレビはブラウン管だし、最新のゲーム機はスーファミで、インターネットはおろか、携帯電話もないし、まだまだ世界の広さは自分が生まれた町を超えることはなくて、あの時、どの選択肢を選ぼうが選ぶまいが、トゥルーエンディングには届かないことをはっきりと知りながら、記憶の中の、あるいは記憶にあるといいなっていう、夏の終わりに胸を馳せたりするのにむいてる。そんな名作。
たかなべ

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