湯っ子

過去のない男の湯っ子のレビュー・感想・評価

過去のない男(2002年製作の映画)
4.5
いや〜面白かった!カウリスマキでは寝るのもあり、と思ってたのに寝る暇なかった。
いつものゆったりテンポではあるものの、この主人公はけっこう行動的だから、たくさんの人との出会いがあって、出会う人々もそれぞれ個性的で愛すべき人物。そしてクスっと笑わせてくれる。
そして、カウリスマキ作品に出てくるワンコはどうしていつもみんな絶妙な面構えなんだろうか、登場する人物たちと同じく、ちょっとかわいそう≒かわいいって感じの。
主人公は暴漢に襲われて大怪我を負ったあげく、記憶もなくしてしまった男。最悪の出来事の後は出会いに恵まれたりしつつ、名前も思い出せない状態なのに、なんとか住むところや仕事や恋人も得る。これはただのラッキーじゃなくて、彼が与えられた出会いを大切にして、今いる環境の中で自分にできる最良のことをやっているからできたことなんだと思う。そんな様子は、物物交換はないものの、ちょっと「わらしべ長者」を連想した。
それから、この話も「死と再生」の話なのかなと思った。よく「死んだ気になればなんだってできる」っていうけど、この主人公は本当にいちど死んでる。だから、こんな状況でも腐りもせず前向きなのかな。
このお話の中でひとつだけ切なかったのが、銀行強盗のおじいさん。…あの人を責められる人っていないと思う。

お寿司&クレイジーケンバンドのシーンは、各国の映画ファンの中で、日本人がいちばんこのシーンを楽しめているに違いない幸せを噛み締めた。
クレイジーケンバンドといえばさぁ、私がたぶんこれまででいちばん忙しかった時期に西友で、「どこにあるのか幸せ〜、きっと気付いてないだけ〜、だってお、ま、え、いいおん〜な〜♪」っていう曲がヘビロテされてて、なんかふと泣きそうになったんだよね…化粧っけもない、なりふりかまわずやってるそのへんのおばちゃん讃歌。きっとあの時、買い物してるおばちゃんもレジ打ってるおばちゃんも、内心私と同じ気持ちだったんじゃないかなって思ってるの。クレイジーケンバンドとカウリスマキ、どっちも優しいな。ちょっと話がそれましたけど、とにかく、この映画良かった。大好き。

日々の生活に追われる貴女へ、貼っときます。
セクシー美女を見たい貴方にも。
クレイジーケンバンド「1107」
https://m.youtube.com/watch?v=y5fcVe3KeHs
湯っ子

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