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過去のない男のpikaのレビュー・感想・評価

過去のない男(2002年製作の映画)
4.0
1どころか0から始めるルーザーによる人生賛歌!家もお金も名前すら失って何も残ってないド底辺の人間が、それでも失わず保った尊厳と生への意思、人を愛する心という最もシンプルで基本的な人間の心を全肯定するドラマが達観レベルの物凄さで、色んな刺激を体験し過ぎてたどり着いた先は、シンプルな番茶が一番美味い!みたいなジワーッと心も体も満たしてくれる演出が極上で、酸いも甘いも経験し尽くしたが故に光り輝くような音楽が素晴らしく、見ながら鼻の奥がツーンと涙腺がジワーッとこみ上げながら自然と笑顔になるような、毒素を排出し栄養補給のできる完璧な傑作!

「見逃してない?ちゃんと見てよね!」とカットが切り替わるごとに拡大していく壁に掛けられた写真で語るカウリスマキの想いに、寄り添うように最高の演技を魅せるオウティネンの存在感が素晴らしく、毎度似たようなテーマを通常運転な演出で表現しているにも関わらず「誰1人として同じ人間はいない価値のある存在」と言わんばかりにキャラクター達の熟成された魅力が新鮮な感動を与える。

何もないけど何もないからしがらみもなく前のみを見て踏み出せることの裏に、どんな過去があっても前を見れば変われることができるし気づけるものもあると静かに語ってくれるような暖かさに満ち溢れている。
些細な向上が人生に彩りを与え、心を寄せ合う誰かと共に過ごす全ては些細なものでも幸せである。
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