こんな映画が観たくてたまらなかった。
小津とブレッソンと、時々ジャームッシュが見え隠れしているような夢のひと時。
更にアキカウリスマキによる独特な世界観が一番に広がっている。
暴漢に襲われ記憶を無くした主人公。
また新たな人生を歩もうとするのだが、どうしてもこの世界を生きるには過去が問われる。記憶がないのだから答えようがないそんな主人公は口を開かず、流れにゆったりと身を任せる。そんな彼に徐々に人々は近づいて行く。ある者はビールを奢るし彼女はできるし。そんな彼を映し出す映像が心地いい。
彼女が出来たとなれば、おそらく彼の過去には妻か彼女がいたと推測できる(ストーリー的に)。
おそらくあの時は気づかなかっただろうけれども、過去の自分は記憶がなくても分かるクズだったと知る。そんな元妻に新しい男が出来たと知り別れを告げる。
寿司と日本酒を嗜み、暴漢に会ったりとかして、家に帰る。今の彼女の元に。
銀行強盗に遭遇するなど、スリリングな展開が用意されてはいるのだが、大きな事にはならず物語が進む。ただ淡々と流れに身を任せてる。
何もない主人公なのだが「人生は後ろに進まない」というセリフの通り、彼が今を生きようと少しづつ動いてる姿に、なんだか人生っていいなって思わされる。
本当に良い映画に出会った時って感想が出てこないその最たる例。
遠くなって行く二人、手前を走る汽車。