アーリー

レオン 完全版のアーリーのレビュー・感想・評価

レオン 完全版(1994年製作の映画)
5.0
今の世の中では描けないであろう名作。
スティングの「シェイプオブマイハート」まで含めて雰囲気の良い作品。

映像の見せ方が上手いと思う。特に人物の主観でのシーンは、あえて全容を見せない代わりに光やブレを使って的確にその内容を表現してる。それによって何が起きたのか観客は自分たちで補えるし、かつ印象的なシーンとして焼き付く。
ニューヨークの街並みがたびたび映されるが、色合いが澄んでいて綺麗というわけでなく、どこかくすんでいるのがこれまた良い雰囲気でモダンな感じ。レオンの部屋が普通のアパートみたいやったのも、街の雰囲気にあってた。

キャラの登場の仕方も印象的。
暗闇から現れ暗闇に消えるレオン。
年相応の少女らしい服装をしながら、手には煙草と頬のあざというアンバランスさを見せるマチルダ。
自分のヤバさを飼い慣らしてるような、冷静にイカれてるみたいな不穏さを感じさせるスタンスフィールド。
彼役のゲイリー・オールドマンの薬キメるシーンは初めて観た時から忘れられない。
終始目はイってるし、ほんまに薬やりながら演技してるかのよう。
ジャン・レノの寡黙な男が心を開いていく演技もいいし、ナタリー・ポートマンの色んな意味で純粋で可憐な少女の演技も良かった。

ネットでレオンとマチルダのキスについての考察があった。SWATの襲撃を受け、囚われたマチルダをレオンが取り返すシーン。マチルダは泣きながらレオンに飛びつくけど、映されている映像は二人の足下だけ。ここで2人はキスをしているんじゃないかという。
まさに「映画のようなキス」になると思うし、しててもおかしくないのかなと感じる。しかもここまで映像にこだわっている作品やからこそ、足下のカットは意味があるはず。片方はそのまま立ち、片方が背伸びをしてる足下を映すことでキスを表現するように、マチルダを背伸びどころか抱き抱えて浮かすことで身長差、さらには年齢差をも表現したキスシーンに見えないこともない。
実際にキスさせるのはヤバすぎるから、こういう風な表現になってるのかな。
けど個人的にはキスしてて欲しくない。
今作は実際に性的な触れ合いをしていないことが、レオンとマチルダの良い雰囲気を作ってる要因やとも思う。
マチルダに必要やったのは身体の触れ合いではなく心の触れ合い。そしてそれはレオンにも同じことが言えた。性的な関わりを持たずに愛してると言い合えたというのが2人にとって最高の結末。

映像、キャラ、演者、音楽。
色々な要素が絡み合った良い映画。
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