ちょげみ

レオン 完全版のちょげみのレビュー・感想・評価

レオン 完全版(1994年製作の映画)
4.3
あらすじ
麻薬捜査官に家族を惨殺された少女マチルダは、隣の部屋に住む殺し屋レオンに助けを求める。レオンは戸惑いながらもマチルダを渋々自分の部屋に入れ匿い、奇妙な同居生活が始まった。家族の愛情を浴びることなく生きてきたマチルダと、19歳以降人との深い交流を絶って暮らしてきたレオン、彼らの間にはやがて愛情に似た何かが芽生え始め...


 12歳ながら、18歳と言い張っても周りの大人の目を騙せるほど演技力に長け、自立的で、成熟しているように見えるマチルダ。一方、感情を心の奥底にしまいこみ、そのまま引き出す術を忘れてしまったように見えるほど、口下手で、無口なレオン。
マチルダは自分のことを
「私はもう大人よ。あとは年をとるだけ。」
と言い、一方でレオンは
「俺はその逆だ。歳は食っているが、まだ大人になっていない。」と言う。
 この映画は歪な人間関係を持ち心のどこかに空洞が空いている二人が、愛情の相互やり取りを通じて空洞を埋めていく物語である。
 物語の終盤、少しずつ歩み寄っていた二人が、危機的状況を通して一気に距離が縮み、感情の発露を通して、お互いに求めていたもの、望んでいることを与え合う。最後は悲劇的結末で終わってしまったけれども、学校の寄宿舎に戻ったマチルダはもう以前のマチルダではない。彼女は大きな喪失を通して愛の普遍性を理解し、自己というものに揺るがない支えを持つようになる。


 この映画は冒頭の15分ですでにただものではない気配(映画)を漂わせている。
 セントラルパークを上空から捉えた美しい緑をバックにタイトルが映し出され、カメラがニューヨークの街中を通り店内に入り込む。
 その後殺しの依頼で目のドアップからの殺しの仕事。レオンの熟達した暗殺術によりものの数分で仕事は完了。護衛を秒殺し、暗闇からターゲットを捕捉する。レオンの手と顔だけが浮いて見え、ターゲットの喉にナイフを突きつけて命令する姿は、一瞬でレオンを無機質で依頼に忠実な、凄腕の殺し屋であることが伝わってくる。

 しかしレオンの登場にも引けを取らないのが、悪役のノーマンの登場シーン。振り返っただけの演技でとんでもないヤバい奴だというのが画面を通してひしひしと伝わってくる。クスリを決めて歓喜に震える姿なんかは、こいつは頭のネジが外れたやべー奴だ...という畏怖を私の心に刻み込んだ。

 総じて言うとマチルダとレオンの個々の魅力と関係性、悪役のノーマンの魅力、ちょっとしたコメディ要素、世界観の作り込み、最後の悲しくも美しい結末、どれをとってもGOOD👍
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