次男

レオン 完全版の次男のレビュー・感想・評価

レオン 完全版(1994年製作の映画)
4.5
2時間15分ずーーーっと、「完璧だ」って思い続けてた。ずっと。完璧なんて言葉は使いたくないけど、完璧だとしか思わなかった。以下、いかに完璧だったかということをつらつらと。ただ、きっとメモの帰結は、「この映画は完璧だった」ってだけになると思う。


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事細かなネタバレ
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・はじまり

殺し屋レオンを思い知らせる最初のシークエンス。サングラスのドンヨリで幕開けるのクッソかっこいいし、暗殺中も顔を見せないという大正解カットワーク、からの「暗闇から出てくるナイフと顔」っていうキラーカットで顔出し。…完璧すぎる。
(このファーストシークェンスでこの映画のスタンスーー適度に漫画的であるというーーを明確にしているのもすごい。これが以降ですげえ効いてると思う)


・マチルダとの出会い〜スタンスフィールド登場

恐怖の殺し屋からのミルク購入で少しガードが緩んだところに、素敵なマンションとぶらぶらする足、タバコを吸う美しい少女。巨男と少女が出会って、物語の開幕を感じさせすぎる。ワクワク。
間髪入れずに、スタンスフィールド登場。バックショット数カット、マチルダの不安そうな視線のカットで期待値上げられ、振り向くとくたびれた普通っぽい奴。なのに、「ぱっと見普通なのに、どう見てもヤバい奴」ってすぐわかるし、なんせ音楽聴いてる+顔をくんくんという強烈個性で完璧なイントロ。(このスタンスフィールドの漫画っぽさも、レオンの登場シーンで無意識に線引きできてるからすんなり見られる)


・レオンの日常

シャワーを浴びるレオンの、なんとはなく感じる「苦悩っぽさ」。観葉植物の世話をして、丁寧にアイロンを当てて。これらの描写がここに入るのが本当にニクい。「怖い殺し屋かと思いきや、きっと心優しい怪物なのね」って、次のシークエンスの前振りがすんなり完了してる。完璧。
(その後、マチルダの家族のシーンを挟んでの映画館のシーンなんて、スーパー名シーンでしょ。あの、レオンの顔!これも、シャワーやアイロンのワンクッションがあったから成り立ってると思う。殺人のあと映画館に直結だと、狂気っぽくなりかねないのかも)


・マチルダの日常

マチルダが、最底辺ではないっぽいってのが絶妙。ド貧乏ではないし家族もいる、けどここに彼女の居場所はないのかなー、なんて思ってるところに「彼女は死んだわ」の電話。これでマチルダ(とその家族)のスタンスも明示できちゃってる。


・事件のはじまり

紹介シークエンスと事件のはじまりシーンを同時にやる映画が多い中、『レオン』はこの時点で各キャラ登場二周目。この、「すでに一回触れてる」ってのがすごくデカいと思う。
映画を観終わってマチルダとまた出会うレオン。「大人になっても人生はつらい?」「つらいよ」の名台詞で、暗黙にもはっきりと絆を作ってる。こんなにも違うはずのふたりなのに、こんなにもスムーズに結ばれる下地作りが完成。すごい。
「ミルク、二本」というお使いも、「渦中から離す」「レオンをいつも見てる」を両方叶えてて、まさに一石二鳥。
そこからのスタンスフィールドによる虐殺は、絶品。「漫画っぽい」とタカをくくってたところにキツめの残虐描写で、「スタンスフィールドはやべえ」って刷り込まれ。錠剤かじってイキ顔ってのも、音楽とか顔くんくんに並ぶ素敵厨二演出。
そして、マチルダ帰宅。「家に入れて」のくだりとかうますぎるよう。1.「どうなる!」のハラハラ感、2.マチルダの冷静さと子供さ(加えてナタリーの演技力)、3.レオンの優しさを伝える、なんと一石三鳥で、最高まみれのこの映画の中でも、個人的にはトップクラスに好きなシーンだった。
シークエンスの最後には、「生き残りの娘がいるとスタンスフィールドが知る」「マチルダは弟の仇を取りたい」という、この映画の中のふたつのエンジンを明確にし、さらにパペットピギーやら牛乳吹き出しやらでレオンに萌え死ぬというトドメね。


…ここまでで約40分。なんて無駄のない、完璧な40分。すごすぎ。

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・共同生活開始、「私を殺し屋にして」

まず、夜中のレオンのシーンすごいすね。「あー殺し屋だから椅子で寝るのかー」って思ってたらマチルダに銃向けだして、殺し屋としてのプロさを見せちゃうっていう。
再鑑賞してみて痛感したのが、「マチルダに殺しを教える描写の丁寧さ」。レオン、思い出以上に、マチルダに教えるの渋ってた。初回の押し問答の決着は、市街地に銃乱射。最高っす。

レオンが字が書けないことがわかったり、口がずっと開いてるんだなあってじわじわきたり、トニーに利用されてるっぽいことがわかったり、強かったはずのレオンが実は弱者なのかも、って思わされて、ひたすら愛おしさがこみ上げ続ける。

観葉植物にトラディショナルなトランク、巨男と少女で歩くというキラーカットを挟みつつ。


・特訓開始、ふたりの日常

ライフル教えるくだりでコミカルを取り戻すところからはじまり、特訓の点描、反対に字を教えるシーンも交えながら、名シーンのコスプレごっこに突入。この一連、どんだけニヤニヤしたか!
それまでレオンが外に出していた観葉植物をマチルダが外に出したとき、「お!」って思って、そこですかさず「観葉植物=レオン」の隠喩関係を示す。ほんとうまいな〜〜。


・「あなたに恋したわ」

わ、言いよった!答えあぐねてるレオンに、背徳の予感を覚えながら。背伸びして大人ぶるマチルダ、対処しきれないレオンを随分丁寧に描くけど、個人的にはこの丁寧さは必需品だと思う。これだけ丁寧に描かれたら、両方の感情に対して雑に「恋です」とかレッテル貼りはできない。


・スタンスフィールドの素性

マチルダが事件現場=自宅に戻る流れはストーリーテリングとしてとってもうまいなあ!「スタンスフィールドはDEA」というカミングアウトに驚かされながら、同じタイミングで「マチルダが相手の素性を知る」もやっちゃう。別々でやったら無駄に倍の時間かかりそうなのに。(この映画はこういう一石二鳥がうますぎる)


・「スタンスフィールドを殺して」

1回目の「殺しを教えて」で魅力的に開始して、今度は「スタンスフィールドを殺して」でさらに情熱的に進む。「私が欲しいのは愛か死よ」という名台詞、からのロシアンルーレット。「私が勝ったらあなたと一生一緒にいさせて」「装填の音でわかる」、かっこええええ惚れるううう。


・ガムトリックの点描

これまた名点描〜〜。ふたりのスタイルができてく楽しさにまぎれて、ここでニット帽オソロになったりリングトリックの前振りしたり…。何度でも言うけどうますぎる。


・マチルダ単身乗り込む

ここのスタンスフィールドさんは触るな危険すぎてやべえすね。マチルダを追い詰めるとこもだけど、そのあと自分の部下になんとなく銃を向けてるとこ、撃つ理由ないし身内なはずなのに、こええ、撃ちそうでこええ。スタンスフィールドこええ。


・レオンの過去、ベッドで眠る

レオンの過去は、本筋とは関係ないけどけっこうしっかり語られる。19歳の恋が最後の恋で、はじめての殺しは恋人の父親だった。彼の時間はそこから止まってるんだなあと思うと、子供っぽく見えていた彼が明確に「大きな子供」にみえてくる。19歳、と言いながら、以降まともなコミュニケーションをとっていないことを考えると、対人関係においてはもうすこし退行してるのかも。たとえば、16,17歳とか。…あれ?マチルダとあまり変わらないじゃんか、って、なんか思ってしまったりして、決して断定したくなかったマチルダへの感情=「恋」が、どうしても頭をよぎってしまう。


…ふたりで並んで眠った翌朝。マチルダはミルクを買いに行く。いやがおうにも、冒頭のお使いを思い出すのは、きっと狙い通りだと思う。


・そしてラストへ。

殺し屋レオンの圧倒的な力を見せながら、スタンスフィールドの抜かりなさもしっかり怖くて、そして「ああ、もう奇跡みたいなふたりの時間は終わるんだなあ」と悲しく見守る。

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ストーリーは無駄がなくて、映像はいちいちかっこよくて、キャラクターは立ちまくって未だにコスプレされまくって、エリックセラの音楽は最高で、それらが集まってきちんとドエンタメになってるって、なんなんやこの映画の完璧さは!!

追い討ちをかけるように完璧なのは、その普遍性。四半世紀前の映画だって信じられる?スマホとかパソコンとか時代性のあるものほとんど出てこないし、もし全世界の人々からこの映画の記憶消えたら、2018年の新作として上映できるっすよこれ。

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結論として、この映画は完璧だった。
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