「大人になっても人生はつらい?」
「いつだってそうさ」
舞台はニューヨーク。
イタリア系移民のレオンは孤独な殺し屋。
鉢植えの観葉植物をこよなく愛す彼は身寄りも学も無いが、仕事は一流で一切隙が無く、若い頃から世話になっているトニーの下で、日々仕事をこなしている。
そんなある日、同じアパートに住む少女マチルダが、家族を皆殺しにされたことを切っ掛けに、物語は動き始める。
その犯人は麻薬捜査官スタンスフィールドだった。
彼女を見捨て切れなかったレオンは、行き場の無くなった彼女と、秘密裏に共同生活を始める。
そして、マチルダは次第に倒錯した愛情をレオンに抱いていくこととなる...。
メインキャスト3名の演技力の凄さに尽きる。
レオンを演じるジャン・レノは、演技力も然ることながらイメージがぴったり。
光と温もりを拒絶した生活の中、窓辺に置かれた観葉植物の鉢植えに、彼の望みと本当の彼自身が投影される。
その無口で無骨な殺し屋は、意外にも子供のような純真さの持ち主で、本来の彼を知るにつれ、観客は彼に愛おしさを感じることになるだろう。
彼に救いを求めた少女との生活の中、暗闇で生きてきた男は光を受け入れ、自分の夢を託し彼女を愛し始めることとなる。
マチルダを演じるナタリー・ポートマンは、健気さと子役とは思えない色香を見せる名演技。
レオンの身の回りの世話を焼いたり、お揃いのニット帽とサングラスを用意したり、キスしようと迫ってみたり。
だが、彼女はレオンに頼り続けずしっかり自分の足で立っており、よくある"子役がウザい"状態にはならない。
吊り橋効果的な状況もあり、彼女はレオンをいつの間にか男として愛し始める。
その切ない恋心は、彼から「仕事」を学ぶことで、つらい人生を生き抜く強さへと変化してゆく。
そして何よりゲイリー・オールドマン。
麻薬取締官でありながら、麻薬密売組織を牛耳るスタンスフィールドの狂気の演技は、観客を常に不安にさせる。
その瞳の奥の暗闇には、同僚警官すら恐怖する。
多くは語るまい。観れば解る。
物語が佳境を迎え、マチルダがレオンの鉢植えを寄宿舎学校の庭先に植えるラスト。
俯瞰で捉えた観葉植物は、光と温もりを精一杯享受し、太く根を張る未来を想起させ、救いの象徴として心に残る。
一服の清涼感を感じる素晴らしい作品だと思う。
ハナマル!
2019/11/12