horahuki

28日後...のhorahukiのレビュー・感想・評価

28日後...(2002年製作の映画)
4.0
全力疾走ゾンビの金字塔!
病院のベッドから目覚めると街から人が消えていた!ラジオから流れる怪しい音声を頼りに車で爆走するゾンビ映画。

厳密には『ナイトメア・シティ』(未見)や『バタリアン』があるので元祖というわけではないですが、走るゾンビを浸透させたのは間違いなく本作(と『ドーン・オブ・ザ・デッド』)の功績なので、金字塔といっても問題ない作品だと思います。

ただ『バタリアン』は厳密にはゾンビと明言されてるわけではないですし、本作もあくまで「感染者」であってゾンビとは明言されていません。まあどっちも今となってはゾンビですけどね(^^;;

あらすじ…
舞台はロンドン。病院のベッドで目覚めた主人公は周りに誰もいないことに気づく。街に出るも人の気配が一切なく、教会に行くと中で沢山の人が死んでいた。そこで人間とは思えない形相した者たちに襲われる。必死で逃げていると生き残りの人間を2人見つけるが…

高校生くらいの時に初めて見て以来の久々の鑑賞です。当時はB級ゾンビ映画としてほ〜んと言った軽い気持ちで見ていましたが、改めて見ると過去のゾンビ映画へのリスペクトを取り入れつつも、全力疾走という新たな恐怖の方向性を打ち出しており、手堅さとチャレンジ精神を両立させた素晴らしい作品だと感じました。

種の保存という大義名分。それはたしかに種としては正しいことで肯定されるべきものですが、本作ではその絶対的な命題に対しての対抗馬として「人としての尊厳」をぶつけてくる。人の尊厳を踏みにじってまで行われる種の保存。その行為を是とする彼らは果たして人間なのか。それこそ本能のまま人を食い散らかすゾンビなのではないのか。

ゾンビに襲われる恐怖を描きつつも、ゾンビを人間の汚さを炙り出すためのギミックに落とし込んでいたり、価値観の台頭や支配体制の逆転を盛り込んでいるあたりは、ロメロの流れを汲むもので誠実なゾンビ映画と言えると思うし、そういった根っこの部分がしっかりしていることこそが、全力疾走ゾンビという賛否わかれるものを生み出しながらも未だに評価されてる理由だと思います。

特に価値観の台頭が本作では非常に強く描かれている。ゾンビが人間に台頭するのではなく、ゾンビの出現により動物的価値観が人間を支配していく様子が恐怖として描かれる。これは旧時代への逆行を意味するものであり、人間としてのアイデンティティを揺るがす恐怖へとつながっていく。

ちなみに私は走るゾンビ肯定派です。そもそも本作のゾンビは死んでおらず、ただの感染者であり、ロメロ以降のモダンゾンビの範疇には入ってこないと思います。なのでモダンゾンビのルールであるノロノロ動きは本作には当てはまらない。そういった理由から走るゾンビへの批判は本作には的外れではあるのですが、今ではゾンビ映画として扱われてるし、なにより見た目がゾンビですからね(笑)

でも、モダンゾンビの性質をあえて持たないようにゾンビではなく「感染者」としたのは製作陣の配慮的なところもあるのだろうなと思います。そういったところも踏まえると本作は本当に誠実に作られた映画だと思いました。
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