ひろ

ベン・ハーのひろのレビュー・感想・評価

ベン・ハー(1925年製作の映画)
3.7
ルー・ウォーレスによる小説「ベン・ハー」の3度目の映画化作品であり、ウィリアム・ワイラー監督によって製作された1959年のアメリカ映画

第32回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞など11部門を受賞した

1925年にMGM(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)によって製作された「ベン・ハー」は、サイレント映画史上3番目の興行収入を記録した作品。1959年に再びMGMにより製作された「ベン・ハー」は大ヒットし、ミュージカルが下火になり倒産寸前だったMGMを立て直した。さらにアカデミー賞で11部門を受賞した。この記録は未だに破られていない。

1880年のルー・ウォーレスによる小説は、19世紀アメリカの最大のベストセラー作品で、1936年に「風と共に去りぬ」が発表されるまで、その記録は破られなかった。小説とサイレント映画でこれだけの実績のある作品を、アメリカ最高の巨匠ウィリアム・ワイラーが監督したんだから、アカデミー賞の記録を塗り替えたのも当然かもしれない。

サイレント映画のリメイクではなく、ちゃんと原作を基にして製作されたんだけど、あまりにも有名な戦車競走のシーンはサイレント映画版をモデルにしていて、これは後に「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」のポッドレースの元ネタにもなった。この戦車競走のシーンは映画史に残る名シーンだろう。

212分という長尺だけど、圧倒的なスケールの歴史スペクタクルだけに、飽きることはない。完璧な映画という人もいるだろうけど、個人的には同意できない。確かに前半の奴隷船のシーンなんかは迫力があったし、戦車競走までは完璧と言ってもいいだろう。だけど、原作の副題が「キリストの物語」となっているように、後半はキリストの奇跡を描いた作品に様変わりしてしまう。

「新約聖書」ゆかりの人物が登場したりして、一気に宗教色が強くなり、キリストの奇跡を感動的に描いている。これは、キリスト教徒なら理解できるし、ものすごい感動もあるんだろうけど、残念ながら信者ではないのでちょっと理解できなかった。戦車競走で終わっていたら満点だったかもしれない。

ベン・ハー役でアカデミー主演男優賞を受賞したチャールトン・ヘストン。ハリウッド黄金期を支えたスターで、「猿の惑星」といったSF映画なんかにも出演した名優だ。身長が高くマッチョで品格があるというキャラクターは、誰にでも演じれるものではない。族長イルデリム役で助演男優賞を受賞したヒュー・グリフィス。出演シーンは少ないのに、その強烈な個性はずば抜けて目立っていた。

MGMと言ったらミュージカルというイメージだけど、こんな歴史スペクタクルも作っていたりする。傑作ばかりを残したウィリアム・ワイラー監督の作品だというのは、もう面白さを保証されているようなものだ。ちょっと長い映画だけど、観るだけの価値はある作品なんじゃないかな。
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