広島カップ

ブリキの太鼓の広島カップのレビュー・感想・評価

ブリキの太鼓(1979年製作の映画)
3.4
いつも肌身離さないブリキの太鼓を打ち鳴らし、気に入らない事があると奇声をあげてガラスを破壊する。三歳で自らの成長を止めたばかりか母胎回帰的な行動もとる。
なんともグロテスクな大人が作り上げた大人にならない"妖怪"オスカル。
しかし良く見ていると本人は成長を止めたつもりでもやはり勝手に成長して行ってしまうし、最後まで太鼓を放さないのかと思って見ているとそうでもない。
ラストに列車に乗せられて祖母と引き剥がされた彼の姿に「いつまでも駄々こねてるんじゃないの。しょうがない子ねぇ」という作者のメッセージもとれる。

人間は気儘なもので周囲の環境が気に入らないと生物として不自然なことをし始める。
環境とうまくマッチしない時の選択肢としては"戦う"、"馴染む"、本作のように"逃走する"があり得ると思うが、いつもどれかではなく上手いことバランスを取れる事が"大人になる"ことだと思う。

バランスの悪さを見事に表現した音楽が巨匠モーリス・ジャール。流石!
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