りんごチャン

ブリキの太鼓のりんごチャンのレビュー・感想・評価

ブリキの太鼓(1979年製作の映画)
4.0
昔同じタイトルのレコードが姉のレコードコレクションにあった。イギリスのJAPANという短命バンドのアルバムで調べてみるとどうやらこの映画からインスパイアされて付けたタイトルらしい。知らなかった。少年に太鼓を叩けという歌詞がラストナンバーに使われているとのことで確認するとホントにそう歌っていた。このアルバムが一風変わってるのはこの映画の影響なのか…

とにかく変テコな映画。ギュンター・グラスというノーベル文学賞受賞作家の原作。彼はこの映画の舞台ダンツィヒ(現ポーランド)で商売をしているドイツ人の父とカシュバイ人の母との間に生まれドイツとポーランドなど様々な民族の間で育った。この事は映画でも重なる要所であり、特異な能力を持つ主人公オスカル少年(顔が怖い…)のクレイジーで常軌を逸した成長過程の礎になる。加えて大人の負の側面や男にだらしない母の女の部分を知ったオスカルは3歳にして自ら策略し階段から落ちて成長を止めてしまう…。

大人に対する抵抗として、肌身離さず太鼓を抱え3歳の身体のまま成長するオスカルだけれど成長を止めた策略は果たして彼にとって正解だったのか。少なくとも恋愛については通常の成長のままで良かったのではと思うほど不気味で公開当時物議を醸したのも納得。オスカル自身や弟クルトの出生の不確実さ、ナチス台頭による社会の不安定さは物語に引き込む格好のスパイスにも感じられた。インパクト大の異色作品で生涯忘れる事はないでしょうね。