ま

海を飛ぶ夢のまのレビュー・感想・評価

海を飛ぶ夢(2004年製作の映画)
4.0
ラインニュース上に流れてきた「パイレーツオブカリビアン新作」の文字にへえまたやるのかってぼんやり見てたけど続く「敵役にハビエルバルデム」の文字にガタッ!!!!ってなった。
こ、これは...!
スターウォーズ8のベニチオデルトロ先生起用といいキてる!
目が死んでるおじさんの波キてる!
祭りだ!!!

ハビエルバルデムスキーとしては前々から気になっていた作品。
題材が題材なだけになかなか手を出せずにいたけれど意を決して見てみたら前半は思いの外カラッと見れる作品だった。
描かれている内容は重く先が無く悲惨極まりないどんづまりなのにまるで陽光差し込む水面のような。
キラキラと明るく優しい海原の様な印象だった。
これ偏にラモンさんの人柄のおかげか。

...これ実話なんですね。
自分なんかは出来るだけ長生きして出来るだけ最後まで映画を見ていたいっていう思いに尽きるけど、これは五体満足で映画に飽きたらどこにでも行ける体だからこその考え方なんだな。
死を望んでる人にとっては曖昧な気遣いや言葉が余計なお節介なのかもとか思ったり。
自分の体が牢獄ってどんな感覚なんだろう...人に頼らなければ生きていけない27年間ってどんなだろう...。
きっと様々な事に耐え続けた27年だったんだろうな。
それだけに最初に出てきた時のラモンさんの愛嬌ある穏やかさに凄くびっくりした。
人当たりが良いし何ならこっちの気遣いもしてくれるし。
もっと鬱々としていていっぱいいっぱいな感じかと思ってたら全然違った。
家族にも愛されていて友もいて、こんな方が死にとりつかれているだなんてとても信じられないなとか思ったけども。
でも暫くして一人寝そべる彼のふとした瞬間に見せる冷たく濁った目を見てしまった今はもう何も言えない...。
斜め上、恐らく窓の外を見つめている目が彼の抱えている負の感情の鋭さ重さを十分すぎるほど表していてふぐぉっ(°°;)てなった。
それからよぉく注意見てみると笑顔とウィットに富んだ冗談、明るい優しさの裏側に絶対に越えられない線が見え隠れしてきて。
何だろう、物凄い諦念を抱えているからこそここまで穏やかだったんだなと変に納得してしまった。
彼には先なんか無いし欲してもいなくて、だからこそ人間関係においてもここまで踏み込んだらいけません的な明確な線があって、乗り越えようとすると穏やかながらも有無を言わさずはねのけてくる。
「いいか、先は無いんだぞ」と...それって凄く悲しい。
どこでそう思い始めたんだろう。
事故で体の自由を失った初めの日から?それとも介護の経験を経て徐々に?
動けないからこそ笑顔で間合いを取る彼の姿がとても悲しかった。
最後はもう。
ハビエル本当演技上手すぎか。
この後ノーカントリーのシュガーやってるとか考えられない...。

悲しい話だったなぁ。
でもああすることで彼にもようやく平穏が訪れたのかな...。
彼が唯一心を許した女性の物語も悲しかった。
彼女がサプライズで来てくれた時の無邪気な喜びようがもう。

生は権利だ、義務ではないって言葉。
色々と考えさせられる。
ま