事故で26年間首から下の自由が無くなっている主人公のラモン。家族をはじめとする多くの人から支えられて過ごしていたが、自分らしく死ぬために尊厳死を決意する。彼の意思と周囲の人々の様々な想いを描いたヒューマンドラマ。
ラモンを演じたハビエル・バルデムに尽きる一作。顔しか動かせないラモンの表情と言葉だけで作品を牽引するその演技力は、やはり彼しか務まらないと思えるレベル。
同じく障害者を扱った作品である「潜水服は蝶の夢を見る」でのマチュー・アマルリックもそうですが、この手の映画では相当な実力派の人じゃないと無理だなと改めて実感しました。
尊厳死という人間にとって深く重いテーマ。
もっと重苦しい雰囲気かと思っていましたが、
誤解を恐れずに言うと、予想していたよりは見やすい映画でした。
ラモンが既に死を受け入れているからでしょうか。穏やかさと温かさが随所で滲み出ていて、難しいテーマがある映画でありながら、小難しくならずストレートに心に響く作品になっていたと思います。
劇中でよく描かれている自然の美しさ。特にタイトルにもなっている海はこの作品を象徴するかのように、雄大で心地よさが伝わってくる描写でした。それに呼応するような音楽の美しさも大きなプラスポイント。
監督のアレハンドロ・アメナーバルの演出力の高さが伺える一作。実話を基にしているだけに見応えを凄く感じた作品でした。