「お熱いのがお好き」「アパートの鍵貸します」と傑作コメディを世に放ち、師匠ルビッチ亡き後に"喜劇映画の神様"として君臨したビリー・ワイルダー。その次回作となれば否が応でも世間の注目を浴びるのは必至である。
その状況下で作ったのが、このハイテンション・コメディ「ワン・ツー・スリー」というのがこれまた凄い。とても前年にオスカー獲った人の仕事だと普通思わないもんね。
冷戦下の東西に分断されたドイツにて、コカ・コーラ社(実名使うのが凄いね)の西ベルリン支社長扮するジェームズ・キャグニーを中心に展開されるまさに狂騒劇。
前半は資本主義の代弁者であるキャグニーとコチコチの共産党員の青年ホルスト・ブッフホルツによる丁々発止が面白く、後半はこの若者を短時間で貴族出のボンボンに変身させようと、いうならば"超高速マイ・フェア・レディ"といった赴きである。
またギャグの多さも本作の特徴である。あのフルシチョフの肖像画のギャグを見たときの衝撃はいまだ忘れることができない。
大好きな映画なのだが、ただそのギャグのほとんどが時事ネタかマニアックな映画ネタであり、元ネタ知らない人にとっては皆目わからず、もしかするとワイルダー映画のなかでは最も人を選ぶ作品であるかもしれない。