ホイットモア大統領

霧の旗のホイットモア大統領のレビュー・感想・評価

霧の旗(1965年製作の映画)
3.5
感想:It's a small world.

山田洋次 × 橋本忍 × 松本清張のトリオ作にして、現時点では山田監督唯一のサスペンス映画。といってもやはりドラマ要素が強め。主人公は倍賞千恵子。この人の可憐さ・華奢さを前提に本作は存在している。

物語は、東京の有名弁護士の元へ、熊本から上京してきた少女が「金は無いが兄は無罪なので弁護してほしい。」と懇願するところから始まる。

普通の映画であれば、兄の事件の真相を解き明かしていくストーリーになるはず。
しかし、そこは松本清張原作。主題は倍賞演じる少女、桐子の行動に置かれている。もちろん、愛憎劇のソースをたっぷりかけて。

そして、偶然がまるで運命のように紡がれ、自体は思いもよらない方向へ転がっていく。男の立場からすると、それこそ濃霧の中で手を引かれ、翻弄されているかのような恐怖を感じた。

ラストの捉え方も観客に委ねてくる辺り、最後まで一筋縄ではいかない作品。