YokoGoto

潜水服は蝶の夢を見るのYokoGotoのレビュー・感想・評価

潜水服は蝶の夢を見る(2007年製作の映画)
3.9
他人の苦しみは、決して100%理解できない。
たとえ、その人のまぶたの内側に入っても。
たとえ、その人の想像の内側に入っても。
それだけ、分かち合えない人間同士が、この世の中で縦横無尽に生きている。

脳幹障害の後遺症で、左眼の機能以外がすべて麻痺してしまった42歳が、片目のまばたきだけで本を書き上げるという実話を基にしたお話。

前半の、主人公の視野だけで表現される描写がすばらしい。
決して、本人の本当の苦しみは理解できないが、まるで、彼と同じ視野の中で苦痛を共有できるような表現になっていて、自然に感情移入してしまう。

もしも、明日、急に自分の体の自由がきかなくなったら、残された思考だけで、絶望の中生きていくことができるだろうか?

全く自信がない。

身動きできない潜水服の中で、蝶の羽音のように、まばたきを続けた主人公の命の軌跡。

薄っぺらい感傷はなく、ひたすら、主人公の命のきらめきだけを文学的な表現で綴った良作。