泳ぐマシュマロ

潜水服は蝶の夢を見るの泳ぐマシュマロのレビュー・感想・評価

潜水服は蝶の夢を見る(2007年製作の映画)
3.9
最初から数十分かはずっとジャンドー目線で、定まらない視線、合わない焦点、伝わらない声、見ている私も心がざわざわするような不安なつらい気持ちになる。自分の顔もわからない。
中盤くらいからやっとジャンドー本人の全像、またかつての彼がどんな人間だったのかが観客にも提示されるのだけど、それはジャンドー内部の、自分!自分!今!だけの意識(点)→歴史の中の自分、社会の中の自分(線)、そういう文脈を取り戻す心の回復も示しているのかな。

彼の周りに悪い人がいなくて良かったけど、
優しく献身的な元妻のほうが、見舞いに来ない恋人よりいいと思う。笑

老衰によりアパートメントから出られないお父さんと、
左目以外全身麻痺の息子。どちらもロックトインシンドロームだと咽ぶお父さんの台詞は印象的だった。
また、2年間レバノンで監禁されていたという彼。
自分がそういう状況になったとき、気を狂わさずにいられる生きる糧は、なんだろうか。とか思ったりする。

それにしてもマチュー・アマルリックが大好きすぎる。あのグリンとした目がとんでもなく特徴的で、どの映画にいても印象に残る。それでいて、なぜかいろんな人物像にしっくり馴染む中立的な雰囲気。声も好きだー。