さすらい農場

潜水服は蝶の夢を見るのさすらい農場のレビュー・感想・評価

潜水服は蝶の夢を見る(2007年製作の映画)
3.9
〈目を閉じてはならぬ〉
ある日突然、脳梗塞で全身麻痺になり、左目のまぶたと眼球しか動かせなくなったジャン=ドミニック・ボービーの自伝小説の映画化。
自分の体に閉じ込められてしまった主人公の目線で語られるストーリーを可能にしたのは、言語療法師や彼を愛した周囲の人々と、もちろん主人公本人の想像を絶する努力だった。
一文字ずつスペルを選んで言葉を紡ぐという気が遠くなる作業によって編纂された物語は1ページの重みが別次元。
同じく映画の1シーンとて、その尊さに変わりはない。瞬き一つに世界の全てがあった。
[自分の人生を愛しく思うべきだ]と著者は私達に語りかけてくれるよう。
まぶたの裏に一瞬を焼き付けよう。
絶望に沈みそうになった時は、
自分を愛してくれる人の顔を思い出せと、
儚く美しい[蝶の夢]は私達を力強く勇気づけてくれる。