デカローグのmareのレビュー・感想・評価

キェシロフスキによる十戒をテーマにした各10話の人間ドラマで10時間の映画として通して観ても素晴らしい余韻を残すだろう。それぞれ独立したエピソードでドラマとしての繋がりは無いが一つ一つが一本の映画であるかのような重みと降りかかる試練に苦悩する人々を丁寧に描き切る。これを観るとキェシロフスキは人間の本質を研究する哲学者であることがわかる。物語から立ち上げる虚構へのアプローチではなく、滑稽で生々しい日常のリアルを再現し、ある種の真実を見せつけられた気持ちになる。そして彼らは同じ空の下、目の前に広がる同じ景色を前にして今日もどこかですれ違う。たった10編のドラマを垣間見ただけで一体この街にはどれほどのドラマが広がっているのだろう。このデカローグという作品は人間そのものであり人生だ。