Inagaquilala

黒い牡牛のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

黒い牡牛(1956年製作の映画)
3.8
東京国際映画祭で観賞。ダルトン・トランボがハリウッドから追放されていたとき、ロバート・リッチ名義で脚本を書き、アカデミー原案賞(この賞はこれが最後となる)に輝いた作品。アカデミーの原案賞は「ローマの休日」(これも他人の名前、イアン・ハンターの名前で脚本)に続いてのトランボにとって実質2回目の受賞ということになる。

舞台はメキシコの田舎。牧場主から譲り受けた黒い子牛を育てる少年。やがて牧場主が不慮の事故で死んでしまい、立派に育った牡牛を手放さなければいけなくなる。牡牛は闘牛用の牛てして、売られていくことになるのだが、少年は牛を追って、首都メキシコシティーまでたどり着く。闘牛場で再会した牡牛は、大勢の観衆の前で、闘牛士との死力を尽くした闘いを繰り広げるのだった。

メキシコの田舎から首都のメキシコシティーに舞台が移ると、この物語はがらりと様相が変わる。少年と牛との牧歌的交流は過去のものとなり、大観衆のなかで繰り広げられる闘牛のシーンがメインとなる。この闘いのシーンこそが、トランボをしてこの作品を書かせた原動力とも言われている。

つまり闘牛の黒い牡牛は、赤狩りで追放されているトランボ自身であり、そのことに対する強い異議申立の思いがこの闘牛のシーンに込められている。そのためか闘牛場でのクライマックスのシーンはかなりの迫力があり、ねちっこい描写が続く。かなりこのバトル・シーンに時間を割いていて、普通なら飽きてしまうだろうに、この作品ではそれがない。それほどこの闘牛場でのシーンはよくできている。闘牛を見たことのない自分でも、まるで見てきたような気分になる。

その後のトランボの作品の原点となるような作品だが、彼について描かれた映画「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」のなかでもこの作品については触れられていて、期待通りの力作だった。