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黒い牡牛のkiritoのレビュー・感想・評価

黒い牡牛(1956年製作の映画)
4.1
【闘牛】

ダルトン・トランボがロバートリッチ名義で作ったということでも有名な本作。
トランボ自体はアカデミー原案賞を本作で後に受賞した。
2016年公開の「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」で話題になったのも記憶に新しい。

同年の東京国際映画祭でも公開されたが、見に行けず、先日発掘良品で発見したので鑑賞。

少年と牡牛の心温まる物語。
ジャンルはアクションにされているが、むしろヒューマンだろう。

雷に打たれた老牛が決死の思いで産んだ一匹の黒の牡牛。
少年はその牡牛を心からかわいがる。
しかし、世間はそんなことはお構いなしで牡牛は闘牛として生を全うしそうになるが・・・


農場主と農夫の圧倒的な力の差や、牛の所有者と育成者との関係など、現実世界からみれば生活のためにこの理不尽な関係に大人は従わざるを得ないと納得してしまうところ。
もっとも、子供にとってはそんなことは関係ない。
徹底的な子供目線で作られた本作は、子供ながらの発想力、行動力で権利を獲得していく様を丁寧に描き出している。
特に、大統領の私邸に単身乗り込み、手紙を獲得する彼の姿勢にはどうしたって応援の力がこもってしまう。

幾度となく、自分のもとから離されようとする牡牛「ヒタノ」のために彼が奮闘する様子をみて、大人になった我々こそ「権利、自由」のために戦う姿を学ぶべきなのかもしれない。

クライマックスの闘牛場のシーンは、映画史に残るワンシーンだろう。
多くのレビュアーが書かれているとおり、それはロッキーの戦いを彷彿とさせる。
「ヒタノ」の奮闘は胸に迫るものがある。
一瞬ひやりとするシーンこそあるが、トランボ印の心地よい終わり方にも満足。

1956年の作品でありながら、画面が広く明るく、鮮やかにみえる。
希望の映画であるからそう見えるのか、メキシコの華やかさがそうさせるのかはわからないが、、、

2019.1.22
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