マンボー

フェイシズのマンボーのレビュー・感想・評価

フェイシズ(2011年製作の映画)
3.2
近作のためカメラの性能はよく、映像は見やすい。人の顔の見分けがつかなくなる病気と、その症状の表現には工夫も感じる。いわゆる猟奇的で、卑劣な殺人犯の犯人探しも、犯人はかなり怪しまれるべき人物ながら、ぎりぎりまで確信は持てず、意外なほど、はらはらもした。ポイントポイントで工夫や意図は見えて、よい映画になりうる要素はありながら、惜しむらくはあまりにディテールが甘すぎる。

作り手の予定調和があまりに安っぽい。刑事は脈絡なく突然髭を剃るし、ヒロインは同棲相手がいるのに罪悪感なく他の男性に抱かれるし、島に生まれた刑事のエピソードが、終盤の展開につながることも、申し訳がないけれど想像ができたし、最後はさほどの理由もなくそれらしい場所でいかにもそれらしく戦うことになるし、ミラ・ジョボビッチのキャラクターに合った役柄かも議論の余地があるだろうし、割合キャラクターは立っていて期待させるが、最後まで通して観ると、伏線が弱く、意外性に面白さや喜びが感じられず、ストーリー全般がどうにも説得力に欠け、せっかくなのに安っぽい。

描きたいものがはっきりしていて、人物造形にも感覚がやや古めながら見るべきものがあるだけに、犯人探し以外の物語の進め方の子どもっぽい予定調和が、痛々しくも、とにかく惜しい。監督にはもう二化けはしてほしい。