タケオ

デビルスピークのタケオのレビュー・感想・評価

デビルスピーク(1981年製作の映画)
4.5
 『デビルスピーク』(81年)は「オカルト」と「スプラッター」を見事に融合させたホラー映画史に残る問答無用の傑作だ。主人公クーパースミスを演じたクリント・ハワードの怪演とも相まって、今尚カルト的な人気を博している。クリント・ハワードは『バック・ドラフト』(91年)や『アポロ13』(95年)など実の兄ロン・ハワードの映画に脇役としてよく出演している名バイプレイヤーだが、本作での演技は正にその原点にして頂点だといえるだろう。
 「イジメに耐えかねた主人公が超常的な力によって報復を行う」というプロットは『キャリー』(76年)に代表されるオーソドックスなものだが、本作のバラエティに富んだオリジナリティ溢れる残虐描写は特筆に値する。飛び散る鮮血、転がる生首、もちろんおっぱいだって忘れていない。真っ黒な豚がシャワー中の美女の体を食い千切り、いじめっ子やクソッタレな教師たちの首を巨大な魔剣が刎ね飛ばす。生きたままの心臓もぎ取り描写だって、実は『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(84年)『ランボー ラスト・ブラッド』(20年)よりも本作の方が先だ。教会内で繰り広げられるクライマックスの阿鼻叫喚の地獄絵図、その圧倒的な興奮とカタルシスは只事ではない。世界中のいじめられっ子の「怒り」を代弁するかのようなクーパースミスの雄姿にはつい喝采を送りたくなる。
 クーパースミスの雄姿をいじめられっ子の「怒り」だと前述したが、本作が描出した「怒り」は何もイジメに限ったものではない。『デビルスピーク』には軍隊というシステムに対する「不信感」があり、そして何よりもキリスト教の欺瞞に対する激しい「怒り」がある。本作が描出した「怒り」は国や時代を超えた普遍的なものであり、今でも主人公クーパースミス(クリント・ハワード)の姿に自分との共通点を見出すことは容易い。「これは僕のための作品だ」と思わせるだけの説得力とパワーが『デビルスピーク』には確かにある。本作に—極めて私的な繋がり—を感じるのは僕だけではないはずだ。「ふざけやがって、全員ぶっ殺す‼︎」そう叫ぶ映画に心を揺さぶられなかった試しなど一度もない。純粋なる「怒り」に満ちた映画は常に美しく、そして"正しい"のだ。
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