映画漬廃人伊波興一

インドシナの映画漬廃人伊波興一のレビュー・感想・評価

インドシナ(1992年製作の映画)
1.1
わたくし自身の中で評価とは異質の(あちら側)と(こちら側)の分断をかなり明確にさせてくれた92年公開のフランス映画の一本。30年近い年月が経過した今でもさしてその境界性に揺るぎはありません。
レジス・ヴァルニエ「インドシナ」

26年前の92年は当然、私は20代の若造でした。
若気の至りゆえ今よりも糾弾意識は旺盛で特にこの年公開のフランス映画は自身の境界線を明確にしてくれた印象深い年でした。
未だに曖昧さが拭えぬジャック・リヴェット「美しき諍い女」は別としても、こちら側に位置したフランス映画がカラックスの「ポンヌフの恋人」やキェシロフスキの「ふたりのベロニカ」、あるいは初公開ジャック・ベッケル「穴」などであるなら、あちら側にはさしずめルイ・マル「ダメージ」パトリス・ルコント「タンゴ」ジャン・ジャック・ベネックス「ベティ・ブルー/激情の日」ジャン・ジャック・アノーの「愛人/ラマン」そして本作「インドシナ」あたりが位置します。
もちろん映画なんてすべからく肯定的であっても良いし、排除とか選別などの身振りからはなるべく距離を置きたいと思っておりますが
趣味だの審美眼の違いなどに還元できない、評価とは異質の憤りが気恥ずかしく存在します。

それはこうした作品が当時の時代錯誤な観客や批評家たちから受け入れられ、ふとした間違いで知名度高い映画賞などを受賞したりして
適当な演技指導と画面設計さえ手に入れば自分たちの思い通りに観客も心動かすだろうと、高を括る始末に負えない作り手連中を増長させる点。

本作がアカデミー外国映画賞など受賞していなければ、それから十年ほど後の、どう観てもおぞましいとしかいいようがないドゥニ・ランカンの「みなさん、さようなら」がアカデミー外国映画賞とセザール賞のダブル受賞という恥さらしな光景は回避できたのかもしれないのですから。