ホイットモア大統領

花とアリスのホイットモア大統領のレビュー・感想・評価

花とアリス(2004年製作の映画)
3.8
レビュー前に思い出話を少し。

AKB48全盛期メンバーと同年代の俺は、当時YouTubeでMVを見た次の瞬間には必然だったかのようにはまり、そんな矢先、地元に初めて来るということで発売日当日にCDを買いに行きました。曲名は「桜の栞」。
もちろんイベントは楽しかったですし、握手会なる悪魔のシステムは人を狂わせました。がしかし、唯一納得できなかったのが、「桜の栞」のMVで、監督は岩井俊二さんでした。

それまでのアイドル・ソングのMVとは異なり、映像は舞台裏から始まって群像劇のドキュメンタリー風に展開していく。それも遠くからの撮影や横顔が多く、アイドル的仕草を期待していた俺は、「この監督わかってないな!」と嫌いになりました。

それから10年、たまたま節目の時だと分かったのと、新作『ラストレター』の予告を目にして、岩井作品に挑戦してみることにした次第です。

結果…本作好きです笑

見ているこっちが恥ずかしくなる花とアリスの台詞や仕草。しかしそれが、モヤがかったような映像美に、逆光を使った演出、繰り返されるバイオリンとピアノの音色が組み合わさると、まるでファンタジーのような奇妙な浮遊感が生まれ、個人的にはそれが新鮮というか面白く感じられました。

また、広末涼子さんや大沢たかおさんが演技しているのに対して、主役の2人+1人の演技をしていないような演技も、本作だからこそハマっていたと思います。特に雨の中の花とアリスのやり取りがいい!オロナミンCの蓋をさりげなく渡すのもいい!

あとは記憶喪失(ということにされた)男の子を巡る三角関係、などの捻りある設定も、着地点がわからず最後まで楽しめた要因の一つ。でも1番の被害者はケツ丸出しで身体を張った ”つって先輩” 笑 こういう小笑いが定期的にあるのも良かった。

そして、本作も「桜の栞」も、“少女たちの今” を映し出すという点では共通していますし、改めて見たMVも監督らしさが表れていて…なんだろう…俺、大人になりました。