国境を南に下り、メキシコの険しい山を越え、亡くなった友人の魂が安らぐ地を目指すロードムービー。
トミー・リー・ジョーンズの初監督作品にして主役。カウボーイの荒っぽさと友情を守るごっつい男気が似合っていた。ジョン・ウェインを思い出した。
バリー・ペッパーの冷酷で身勝手だった顔が、人間の弱さを受け入れ柔和な表情に変わっていくようすは見事だった。
ジャームッシュの『デッドマン』に近い感想をもった。アメリカの辺境は死と生が共存していて、時間が止まっているような、見えないものが見えるような。
西欧の合理的な文化から見れば、まだ近代化せず貧しく呪術的な地に見えても、人を拒絶しない心地よさをまとっている。
険しい山と乾いた大地しかないのに潤いを感じた。何もない風景が美しかった。
アメリカから見た一方的なメキシコ観や、国境警備隊の無慈悲で人を人と思わない暴力行為へのアンチなのだろうが、言葉少ない演技で、人の弱さや哀しみを表していて、正義や善意を押し付けず、説明し過ぎず、不思議と心が浄化された。哀しみを引きずりながら。