エンタメアクションに疲れ果て、落ち着いた作品を求めて...
日本のCM『宇宙人ジョーンズ』がすっかり馴染んでいるトミー•リー•ジョーンズの初監督作品。
脚本は『アモーレス・ペロス』『21グラム』『バベル』のギジェルモ•アリアガ。
製作にリュック・ベッソン。
実に渋い。なんとも言えない余韻を残す隠れた傑作でしょう。
邦題の通りだが、親友メルキアデス(メキシコ人の不法労働者)の遺体を故郷へ届ける老カウボーイの魂のメキシコ旅情を描いた異色ドラマ。
孤独で無骨なカウボーイのピート(ジョーンズ)は明るく気さくなメルキアデスと心で繋がっていた。
メルキアデスは家族写真を見せて妻子のことを教え、故郷の話をしてくれた。「万が一自分が死んだらその場所へ埋めて欲しい」と言われていた。
ある日、国境警備隊員のマイク(バリー•ペッパー)が誤ってメルキアデスを射殺してしまう。誰にも見られていないのを確認し埋めるのだが、野生のジャッカルに掘り起こされ発見される。
地元警察は身内の仕業ということと、不法労働者ということであっさりと2度目の埋葬をするのだった。
ピートの落ち込みは激しく、犯人がマイクと知ると家を調べて拉致する。そして遺体を掘り起こさせ、メルキアデスの遺体を馬に乗せ、教えられた土地を目指すのだが、途中は険しい崖のある山道が続く。
立ち寄った家には盲目の老人(リヴォン•ヘルム:『ザ•バンド』のドラマー)から食事をあてがわれる。そして一つのあまりに切ない頼み事をされるのだが、それをピートは受け入れられずにそこを後にする。
途中でマイクは逃げたしたり蛇に噛まれたりするが、なんとか助けあげ、困難な道のりをとうとうメルキアデスの言っていた場所に辿り着くのだが...
これはある意味マイクの成長物語でもあります。自分勝手、軽薄で妻にも逃げられるような他人を思いやれない男が、ピートに殺されると思いながら苦難の旅を続けた暁に、ピートの親友への強い想いと温かさを知り、罪を心から償う気持ちが湧き、数日間で人間が変わる話でもあった。
ピートの内面はそれほど描かれていないが、カフェの愛人との関係性でどんなに孤独なのだろうかを観ている者は知らされる。
途中関わる数人のメキシコ人たちの優しさがなんとも温かく慰められる。
関係ないが、アメリカ大統領が決まった。トランプは以前からメキシコ国境問題を語っていた。今後のアメリカは、世界はどう変わるのだろう?心配しかない。
いや〜、良い映画を観れて満足です。
宇宙人ジョーンズ、やりますね〜!
《追記》
この作品のキッカケは、テキサス州在住のジョーンズと脚本のアリアガがもともとハンティング仲間であり、メキシコ国境をモチーフにした映画を作りたくて企画。
キャストは資金繰りの関係で自分が出ればギャラが浮いて演出も楽ということでジョーンズ自ら主演となった。それが大成功したと思います。