CHEBUNBUN

画家とモデルのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

画家とモデル(1955年製作の映画)
3.5
【ジェリー・ルイスの2.5次元映画】
「死ぬまでに観たい映画1001本」掲載のジェリー・ルイス映画『画家とモデル』を観ました。「死ぬまでに観たい映画1001本」攻略に関して、原点に振り返りTSUTAYA渋谷店に行くと入手が難しい作品に出会えたりする。『甘い毒』や『キプールの記憶』といった作品を容易に入手することができるのだ。『画家とモデル』もその一本であった。

工事現場、看板のデザインの最終調整中。巨大な女性の口の中にいるユージーン(ジェリー・ルイス)におい仕事をしろと発破が投げかけられる。彼は漫画に夢中だ。渋々、機械を動かすと、凄まじい吸引力で漫画が吸い込まれていく。待ってと追いかけると彼のパイプに吸い込まれてしまう。これは大変だと、機械を停止させると、粉々になった漫画が女看板の口から勢いよく吹き出し、ユージーンの吐く煙が、タバコのように彼女の口から吹き出す。それを見て眼下にいる人が、「彼女は肺が悪いのかい?」と小ボケをかます。そして、その怒涛の大惨事は、ペンキにまで波及し、白、赤、黄色のペンキがドバッと眼下をグロテスクな色に染める。ジェリー・ルイスの変幻自在な顔芸もあり漫画から飛び出した2.5次元映画になっているのだ。日本のコメディ映画に足りないのはこうした、線のギャグだと思う。フランク・タシュリンお得意の豪快な連鎖ギャグが炸裂しているのが本作である。

しかし、『腰抜け二挺拳銃』(脚本担当)や『ロック・ハンターはそれを我慢できるか?』と比べると、少々ギャグがキツいところがあり、ジェリー・ルイスの狂ったような笑いや空気の読めない行動は、どこか知的障がい者を小馬鹿にしているような気がしてくる。特に、序盤の食事シーンでケチャップをドバッと皿に盛り付け、手で食べる場面は下品でキツいところがある。

しかし、ギャグの連携はいつも通り冴え渡り、ナイフを投げつける悪ガキに振り回された末に、ドバッと溢れるウォーターサーバーの水を静止するため、ズボンにタンクを突っ込む場面は爆笑した。個人的に、フランク・タシュリン映画なら風刺としても鋭い『ロック・ハンターはそれを我慢できるか?』を「死ぬまでに観たい映画1001本」に選出してほしかったと思う。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUN