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オズの魔法使のLATESHOWのレビュー・感想・評価

オズの魔法使(1939年製作の映画)
3.6
幼少期の記憶では
極彩色のミュージカルファンタジーという認識でしたが、
マンチキンの国や芥子畑の毒々しさは
アメリカの理想の裏側を垣間見たかのような。
大人になって鑑賞する「オズの魔法使」は
場面によってはデヴィッド・リンチの悪夢的世界を
素で描写しているような一種居心地の悪い、屈折したものを感じもした。
純真と狂気は紙一重。
ファンタジーと同時に風刺でもある。
悪い魔女の死を祝うパレードは
大統領選の結果に喜ぶ人々なのだろう。
脳みそのない案山子
心がないブリキのきこり
勇気のないライオン
そして虹の向こうにある
此処ではないどこかを夢見つつも
ホームを求めるドロシー。
アメリカの声無く名も無き民達を表しているのだろう。
天国のような空の景色を眺めてOver the rainbowを歌うドロシー。
此処ではないどこかへ行きたいと
願う人々の心に
時代を超えて響く名シーンだ。
もし、ドロシーこと
ジュディ・ガーランドについて知りたくなったのなら
気をつけた方がいい。
潤んだ瞳に赤い頬の理想的なこの少女は...。
夢と希望のファンタジーには光と陰がある訳で。
しかし、イエローブリックロードを
軽やかにスキップするドロシーは不変の希望の象徴だ。
酷く痛ましい幕内事情は関係なく
アメリカの屈折した理想像を飛び越えて
Over the rainbowの清らかな歌声は
俯いて空を見上げられない人々の胸に時を超えて響く。
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