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オズの魔法使のabeeのレビュー・感想・評価

オズの魔法使(1939年製作の映画)
3.4
【there is no place like home.】

一歩踏み出せば七色の世界へーー

昨今のコロナウィルスによって自宅隔離を強いられる人々のために自宅で映画をストリーミング鑑賞できるようにと発足した「AFIクラブムービー」。
理事であるスティーブン・スピルバーグが1作目として選んだ作品として最近ニュースに取り上げられた作品がこの「オズの魔法使い」。

なんでこの作品を選んだのかなぁと思ってはいたのですが、なるほど。
作品の最後にあるメッセージを伝えることが狙いだったわけですね。

映画は初鑑賞だったのですが、「オズの魔法使い」には少し思い出があります。

私は外国語大学の学生で、2回生のころの必修科目のクラスで英語の文学作品を読む授業がありました。
ジャック・ケルアックの「on the road」とかサリンジャーの「the catcher in the rye」とか英語で読むのが難しい小説も読んだのですが、1作目の課題がこの「オズの魔法使い」でした。
アメリカ人の先生の授業だったのですが、変わった授業をする人で「オズの魔法使い」をテーマに何か作ってこい、と宿題を出したのですね。絵でもいいし、何か工作でもいいと。
わたし絵は得意なのですが、普通に描いたのでは面白くないのでストーリーが分かるようカカシ、ブリキ男、ライオンとの出会いを地図にしたのです。
画用紙もこだわってアンティーク感がでるようにくしゃくしゃにした画用紙の端をギザギザに破いて、コーヒーを塗って古さをわざと出し、宝の地図のようにくるくる丸めて麻紐で縛って完成。
これが先生にえらく気に入られて「来年以降の生徒に見せたいから貰っていいか?」と言われ、あげてしまったのですが結構可愛い作品だったので思い出にとっておけば良かったなと今となっては思います。

久々に余談から始まりましたが…

今作は1939年の作品。
これはカラー映画の歴史の初期に当たる作品であり、その歴史の境目を上手く利用した作品作りになっていました。

ドロシーの故郷であるカンザスの乾いた空気感をセピア色であえて表現し、オズをカラフルな色彩で描いたことで、オズという夢の国を現実世界とは切り離して描くことに成功しています。

もちろん、スピルバーグが今全世界の人々に伝えたい、と思ったあの言葉も今作の大切なメッセージなのですが、今作にはもっと大事なメッセージがあります。

それは思っている以上に人間には大きな可能性があるということ。
脳ミソがなく賢くなりたいと願うカカシ、心が無く優しくなりたいと願うブリキ男、百獣の王なのに弱虫で勇気が欲しいと願うライオン。

それは真実だろうか?
自分では気づいていないだけでカカシはドロシーを助けるための作戦を練り、ブリキ男はドロシーを助け出したいと誰よりも願い、ライオンは先陣を切り城に乗り込む。
君は君が思っている以上に素晴らしい。

ということで、もはやヴィンテージといえる映画だとは思いますが誰もが聴いたことがある音楽に乗せてエメラルド・シティを目指す4人は愉快で明るい気持ちになれます。

でも、今作の助演男優賞は犬のトトですよ。
いや凄いですね。
あんなに素晴らしい演技は観たことないですね。犬とは思えない笑

そして、「家族に会いたい」。
「やっぱりおうちがいちばん。」
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