桜田門外の変を架空の人物たちを交えて描いた時代劇。
浪人風情だが剣の腕は確かな新納鶴千代。
大老・井伊直弼を討つべく腕を買われた新納は、ある目的のために暗殺に執着する。
岡本喜八は「斬る」でも侍の哀愁とともに、決して崇高なものではないことを描いていた。
それはこの作品でも同じ。
カッコ良さと同時に、あくまで人間臭さや愚かさも含めて侍なんだと言っているかのよう。
それは最後の暗殺シーンもそう。
人は斬られたって簡単には死なない。
雪と泥と血に塗れてもがく襲撃者たちと守る者たち。
それこそ戦争映画のような泥臭い暗殺劇。
新納の出自の秘密とすれ違いの切なさ。
これはあくまで史実を基にしたフィクションだけど、その秘密があったからラストは何とも言えない気持ちになったよ。
最初観た時、三船敏郎だと分からなかった。
それくらい新納という侍だった。
三船敏郎は今観ても本当に素晴らしい役者。
正直、これ程までに存在感を放つ邦画俳優は後にも先にもいない。
ああ、三船敏郎マラソンしたくなってきたァ!