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みじかくも美しく燃えのHKのレビュー・感想・評価

みじかくも美しく燃え(1967年製作の映画)
3.7
スウェーデンの三大巨匠と称された映画監督のボーヴィデルべルイの監督作品。1889年にスウェーデンで実際に起きた心中事件を題材にしている。

貴族間の恋愛と逃避行は必ず悲劇で終わる。ロミオとジュリエットからの定説ですね。互いに愛し合ってしまった伯爵と綱渡り芸人の禁断の愛。

しかし、初めはすべてを捨てて自由になれたような気がしたものの、悦に入っていたのもつかの間、追手に追われたり、金銭問題なども起きてたべることすらままならなくなった。もう元に戻ることができない。初めの輝かしい展開からどんどんと陰惨な方に流されていき、最後は何とか用意した朝食を森で食べながら心中。2発の銃声が響き映画は終了する。

2発の銃声が響いて終了する・・・北野武さん。あなた多分この映画見てるでしょ。「HANA-BI」で全く同じラストにしたよね。いや~流石ヨーロッパ映画大好きな武さんですね。この作品もちゃんと把握して自分の作品に上手く取り入れているとは素晴らしいですわ。

この映画も、主演のピア・デケルマルクさんを森を背景に自然光を取り入れながらとても幻想的により美しい被写体として撮っています。モーツァルトやビバルディの曲とかもふんだんに取り入れることにより、よりロマンティックになりますね。

美しい自然に優雅な曲、特にクラシックは神がかり的にマッチします。これはどのラブロマンスにも精通することです。その組み合わせを見事に実践してよりロマンティック且つ幻想的で荘厳に映している監督の器量を知ることができて良かったと思います。

しかし、汚いシーンなどもしっかり描いており、映画の後半でエルヴィラが嘔吐するシーンなども入っていますね。ちょうどマンネリ化してきて映画のクリシェ(決まり文句)に対する反発か抗議の意なのか、このような過激な描写もヨーロッパ映画ながら取り入れたのは革新的と言いますかね。

とても有名な映画のラストシーンですがあそこで静止画にして2発の銃声を響かせることで余韻が残るような結末にしたのは流石としか言いようがありません。その最後の光景もエルヴィラが蝶々を追いかけて生き生きとした顔で殺すことで、主人公のシクステンのある種の独占愛というか彼女を「美しい状態」で殺すことでそのイメージを脳裏に焼き付けようとする光景が見ている観客の脳内によぎるような構成にしていますね。

主人公に共感してしまっている人ほど最後のシーンは心に来るでしょう。あんな美しい人が死ぬ光景なんて見たくないという想いがあのシーンから漂ってきます。素晴らしいラストだと思います。昨今のエモーショナルに泣けば観客が泣くだろうという魂胆で作られるエンタメ重視の映画とは大違いです。(別にそういうのも嫌いじゃないですけどね。あまりにもベタすぎるのは反吐がでるけど。)
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