ほーりー

現金に体を張れのほーりーのレビュー・感想・評価

現金に体を張れ(1956年製作の映画)
4.6
ジャン・ギャバンの『現金《ゲンナマ》に手を出すな』が当たったものだから、邦題を『現金《ゲンナマ》に体を張れ』と付けたのだろう。

しかし、そもそも体を張らないで強盗なんてできっかい!っと私なんかは思っちゃうのだが……。

スタンリー・キューブリック云々って前に、純粋に大々々好きなクライム・ドラマである。

用意周到に計画された競馬場強盗事件を、時間軸を自在に交差させて描き、まるでドキュメンタリーを観ているような錯覚を受ける。

時間軸を変えるって今では全然珍しくない手法なんだろうけど、何しろ六十年以上前の作品ですからネ。当時はよっぽど斬新だったろうと想像に難くない。

強盗団のリーダーであるスターリング・ヘイドンが計画する完全犯罪が鮮やかで(要するに脚本が素晴ラスイ!)、時間軸を変えなくとも十分に本作は面白い。

蹄鉄、トランク、仔犬……といずれも伏線が丁寧に張られている。特に何も罪のない馬の命を奪った者が蹄鉄によって破滅するという脚本的帰結も巧い。

役者さんでは主役のスターリング・ヘイドンが同氏の代表作『アスファルト・ジャングル』での強盗犯を再び彷彿させるような役柄。

まるで『アスファルト~』の主人公が生き延びて、本作はその後日談のような趣がある。

そして本作のMVPは問答無用にエライシャ・クック(・Jr)。『マルタの鷹』『シェーン』と情けない男を演じさせれば天下一品のこの人が本作で己の個性を十二分に発揮している。

ヘイドンの蟻の這い出る隙もない犯罪計画が一瞬にして窮地に陥れた張本人を演じており、正直、ヘイドンをエライシャ・クックが喰ってしまっている。

■映画 DATA==========================
監督:スタンリー・キューブリック
脚本:スタンリー・キューブリック/ジム・トンプスン
製作:ジェームズ・B・ハリス
音楽:ジェラルド・フリード
撮影:ルシアン・バラード
公開:1956年6月6日(米)/1957年12月10日(日)
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