わたふぁ

スモークのわたふぁのレビュー・感想・評価

スモーク(1995年製作の映画)
4.0
ストーリーの記憶が薄れたところで数年ぶりに見た。たまに来る周期には抗えない。
そういえば、なんとも優しい“嘘”に触れられる小粋な映画だった。沁みる。

食いぶちを得るために武器として出した嘘、本当はものすごく怖いけど平気な顔して吐いた嘘、友達を想ってプレゼントのように差し出した嘘...いろいろな嘘があった。どれもこれも生きていくために必要な嘘だった。

タバコ屋店主オーギーの優しさに助けられた友達のポールは、一冊の本を書き上げる。妻の突然の死からスランプに陥っていて数年ぶりのことだった。
そのポール・ベンジャミンは本映画の原作者ポール・オースターの昔の著名。つまり原作者は多くのキャラクターが登場する群像劇の中の1人として自分を登場させている。主人公ではなくその友達として。真ん中からではなく少し離れたところから客観した視点がおもしろい。

真っ暗闇に落ちて無気力になった友達のことを、力づくで引っ張り上げる以外に何かしてあげられることは無いかと考えること。それこそが愛。辛い思いをした場所かもしれないけど、それでも、また明るい世界を歩きたいと思ってもらうこと。作り話の中でしたハグの意味が、現実の2人の間で通じた瞬間に流れる多幸感は忘れない。