“悩ましい人生を煙草でセピアに燻らせて”
タバコ屋のハーヴェイカイテルとその仲間たちが繰り広げる連作オムニバスストーリードラマ。
本作を観るのは10数年振りで
「雰囲気良い映画なのは覚えてるけど、ラストってどうなるんだっけ?そもそもこのパッケージのおばさんてどこで出てくるんだっけ?」
という感じだった。
その忘れ具合が我ながら実に絶妙で(笑)、あの映画的機転とユーモアと夢溢れるラスト30分を新鮮な気持ちで堪能できた。
あそこにハーヴェイカイテルのダンディズムや優しさがギュッと詰まっていて、気づくと涙していた。
音楽や色彩、ちょっぴりノイズ混じりのフイルム感がまさに90年代映画。
良くも悪くも遠ざかったように感じてしまい切なかった。
世間話がベースで延々と続いてく小洒落た会話劇に飽き始めた頃にあの仕掛けがくるタイミングが心地良かった。
結局、嘘か本当か、白か黒か、よりもどれだけ本気の言動か、グレーゾーンの濃淡の見極めが世の中重要なのだなと分からせてくれる大人の嗜みの一本とも思えた。
渋味と滋味溢れる作品。