ぬーたん

スモークのぬーたんのレビュー・感想・評価

スモーク(1995年製作の映画)
4.1
20年振り位に観た。当時は映画通がお勧めする映画のトップの方にあった作品、当時より今の方がグッと来た。煙草の煙が目に沁みたのかな~😢
『スモーク』というタイトルが様々なことを表わしている。ブルックリンの街角にある小さな煙草屋。店主のオーギーが煙草を喫いながら煙草を売っている。煙たい店内には手伝いのジミーとたむろしている面々。暇なのね。
煙草は身体に悪いと誰もが知っている。しかし、ビールの後に(私は甘いミルクティの後よ)一服は最高に上手いのだ。もう随分前に辞めたけどね。
あと少しで命が尽きると分かったら、一服してからアバヨ!(柳沢慎吾風に)と逝きたいものだ。そんな元気はないだろうけど😅
火を消した後は、煙は霧がすっと晴れるように暫くしたら見えなくなって、煙草の残り香だけ。そこには居ないが居たことは分かる。でもまた暫くすると何もなくなってしまう。
オーギーをハーヴェイ・カイテル。マフィアとか暴力的なキャラのイメージがするが、この作品辺りから普通の役も増えた気がする。ただ、作品に恵まれているという感じはない。カイテルのベスト作品はこの『スモーク』でキャラはこのオーギーだと思う。それほど、このオーギーの演技は素晴らしかった。毎朝撮った写真の数にビックリ。何でも続けるって大変なこと。そしてその写真が何でもない日常というのもいい。
馴染みの客で作家のポールにウィリアム・ハート。昔、ウィリアム・ハートが好きでね。83年『ゴーリキー・パーク』原作本が好きで観たらこれが良かった。86年『愛は静けさの中に』88年『偶然の旅行者』とこの3作が好き。しかし、後者2作は完全にヒロインの女優に持っていかれてしまう。引き立て役?もっと主役を張れる俳優だと思ったが、低迷してしまった。イケメンだが髪が薄いし😅話し方も好き嫌いあるかも?70歳の今、最後にひと花咲かせて欲しいなあ。この役はぴったりでオーギーとのコンビも良かった。
黒人の少年トーマスにハロルド・ペリノー・ジュニア。少年役なのに実年齢は30歳過ぎていた!若く見えるのは確か。というか黒人の年齢はよく分からない。みんな若く見える。サミュエル・ジャクソンもデンゼル・ワシントンも幾つか分からん。
その父サイラスにフォレスト・ウィテカー。父と子の実年齢差はたったの2歳!兄弟じゃん。でも親子に見えたけどね。ウィテカーは『クライング・ゲーム』から好き。可愛いお目目に大きな体で愛嬌ある。
オーギーの昔の恋人ルビーにストッカード・チャニング。50歳を超えてたけど、綺麗でスタイルも良い。私生活では結婚と離婚を4回!役と同じような飛んでる女性かも?
その娘にアシュレイ・ジャッド。美しい。マコノヒーやデ・ニーロと交際してたって、綺麗だもんね。痛々しい役で印象は良くないが。
ストーリーについては、ああだこうだと語る必要性もない。何故なら、もうこの雰囲気と登場人物だけで、何ともいえなく心を持っていかれる作品だから。理屈も理由も必要なくなってしまうから不思議。不思議な魅力の稀有な作品だ。
原作はポール・オースターの『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』で脚本も手掛けた。そのタイトル通りに14年前のクリスマスにオーギーに起こった出来事がラストに語られる。そこで初めて、ジャケットのシーンが登場する。この老婆の正体が分かる。
このファンタジーのようなラストで、現実の様々な出来事が、エピソードたちがどうでも良くなってしまう。まるで魔法にかけられたように、観客はすっかり、煙に巻かれてしまうのだ。
スモークSmoke!
ぬーたん

ぬーたん