滝和也

ダークナイトの滝和也のレビュー・感想・評価

ダークナイト(2008年製作の映画)
4.5
絶対悪、純粋悪
その漆黒の闇を
背負いし悪に
月光を纏いし
闇の騎士は今、
相対する…。

今まで書けなかった作品。ヒーローものを愛してやまない私には躊躇いを感じざる得ない傑作中の傑作。

「ダークナイト」

地方検事ハービー・デントを迎え、ゴッサムは街を支配するマフィアを一掃せんとする。だがその頃、ジョーカーを名乗る怪物が闇社会で台頭を始める。市警のゴードン、バットマン、ブルース・ウェインは彼を認め、光の騎士として正義の旗頭として行こうとするが…ジョーカーの絶対悪が彼らに立ち塞がる…。

この作品の恐ろしさは本来のジョーカーの愉快犯的な悪を絶対悪、純粋な悪の象徴として徹底的に昇華させたことによる。それ故に本来自警を称して悪に暴力で立ち向かうバットマンを同じコインの表と裏に描くことを際立たせる。そう二人は同じ闇と言うコインの裏・表なのだ。異形の闇の住人であり、法を超える存在。だがバットマンは正義、高潔なる精神を捨てることはない。その対極がジョーカーであり、絶対悪。純粋な悪に理由などいらない事を証明した見事な対比だ。

更にその構造を複雑化させ深みを増ししているのがハービーである。闇のコインを持って投げざる得なくなるものの存在が、人として、良き市民としての立場を象徴する。それ故ラストの市民や囚人達の決断、彼の行動が対比となり、至高のラストを創り上げる。ハービーと言えば、この名を聞けばあのヴィランであり、バル・キルマー版を見ている方にはおわかりだろう。その存在をジョーカーと合わせ見事に紡ぐシナリオは驚愕に値する。

ジョーカーを演じたヒース・レジャーのユーモアを交えた狂気は演出と相まって究極の悪を創り上げた。その演技には一点の迷いもない。本当に命の炎を燃やし尽くしたか、悪魔に魂を売ったかの演技。その役設定、演技プランはシナリオに説得力をもたせた。二段構え、三段構えのクライマックスは、このジョーカーであればこそ!あり得るし、見事なクライマックスへ突撃する。これ程急逝が惜しまれる俳優は無いかもしれない…。

今作のアクションシーンを超える作品はいくらでも出てくるはずだ。だがこの見事なプロット、シナリオ、演出、演技が融合したヒーロー作品は中々現れないだろう。シリアスかつ重層的であり重厚な真の英雄譚。何度でも見たい作品です(^^)
滝和也

滝和也