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ダークナイトのTEPPEIのレビュー・感想・評価

ダークナイト(2008年製作の映画)
4.7
You either dies a hero… or you live long enough to see yourself become the villain.
「ダークナイト」は言わずともアメコミ映画、そしてクリストファー・ノーラン監督が映画史に刻んだ伝説である。
本作は事件だった。公開前にジョーカーを演じたヒース・レジャーが若くして急死した。その取り憑かれたような役作りは都市伝説では呪われた役だとか言われているが、ヒース・レジャーがかつてない悪役を観客に残した偉業のほかに何があるのか。
さらにまだ3DもIMAXも普及していない2008年のサマーシーズンに何と前作のオープニングの3倍以上、さらに当時最高記録であった「スパイダーマン3」を超えて大ヒットの記録的オープニングでスタートした。この映画はクリストファー・ノーランが作り上げた世界観が前作よりハッキリしている。ヒーローのいない、荒廃し、暗いゴッサムシティのシークエンスだけでなく、リアリズムの追求を常にしている。ノーランは影響を受けた作品に007シリーズと「ヒート」をあげているが、「ダークナイト」はまさにそれらを凌駕する恐ろしい破壊力となった。自己犠牲だけでなく、ブルース・ウェインの挫折、対照的に立ち向かうハービー・デントの図は興味深いだけでなく、バットマンという存在がいかに現代社会に適応できるかという解釈を取り入れている。あくまでそれらが無茶な設定だとしても不思議ではなかったが、本作は違かった。キャラクターの徹底性と三つ巴のボリュームあるストーリーだけでなく、圧倒的なダークな世界観が多くの観客を熱狂させた。本作のシリアスさがクールだったのか?だから流行ったのか? そうではなく、「ダークナイト」は狂おしいほど人間の感情が起こす差異と、娯楽性が備わっている。それだけでなく、キャストたちの名演でドラマそのものが最後まで飽きさせない。ヒース・レジャーのジョーカーの悪役ぶりでなく、その虚無の狂気こそが恐ろしさや力強さを見せており、カリスマ性がある。CGに頼らないリアルな映像、特にトラックの一回転など見どころはたくさん。バットマンというキャラクターとジョーカーというキャラクター、この2人の決着は衝撃的な展開で終わる。
そしてその衝撃は最後まで、正義とは何かという根本的テーマを我々に考えさせる。
総評として、「ダークナイト」は最後まで完成された世界に引き込むだけではなく、ノーランが残した確かな終結がある。しかし「ダークナイト」は続編を必要とする要素もちゃんとある。想像では収まらない物語の結末をきちんと次に繋げてくれる。ダークナイトシリーズの人気を不動にした間違いなく傑作映画のひとつとなっている。
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