カタパルトスープレックス

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

4.3
ポール・トーマス・アンダーソン監督の一筋縄ではいかない作品です。

テーマは「腐った資本主義と腐った宗教」でしょうね。腐った資本主義を代表するのが勝つことにこだわった石油王ダニエル・プレインヴュー(ダニエル・デイ=ルイス)で、腐った宗教を代表するのが宗教家イーライ・サンデー(ポール・ダノ)です。二人とも自分のゴールを達成するためには手段を選ばない。家族も捨てるし、人も殺す。人を騙すなんて当たり前。大企業が立ち塞がったって一歩も引かない。二人とも実在の人物がモチーフ。

まず、キャラクター造形が素晴らしい。ポール・トーマス・アンダーソン監督は本当にキャラクター造形が上手いですよね。ダニエル・デイ=ルイスとポール・ダノも最初は本心を隠して静かな演技に徹する。そして、徐々にクライマックスまで持っていく。最後は必然ですよね。その説得力は二人の演技によるものだと思います。

ストーリーも非常に過酷。腐った何かを描くのは過酷なんですよ。だって、主人公は決してヒーローではない。ダークヒーローですらない。腐った人間なんです。普通は救いの一つや二つはあるのですが、それもない。二人の腐った人間が腐り果てる。それがハッピーエンドであるという皮肉。上手い構成だなと思います。

ポール・トーマス・アンダーソン監督はこの映画で一皮剥けましたね。