こたつむり

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのこたつむりのレビュー・感想・評価

3.3
♪ 救えない 引き裂かれた心を誰にも
  逢ってみたい このボクを求める人に

リアリティ。それは映画の骨子。
どんなに奇想天外の物語だとしても、両脚が大地についていなければ大衆に受け入れられません。映画に難解な哲学を求める向きは少数派です。

そう考えると本作は筋骨隆々な物語。
序盤の黄金を掘るところから油田に行き着くまでの展開は、まさに“現実”をフィルムに刻んだかのような説得力。圧巻としか言えない重量感です。

また、小出しに見せていく筆致も見事な限り。
「この人はこういう人です」なんて説明はなく、観客が一歩踏み込まないといけません。ゆえに気付けば20世紀初頭の息苦しい世界観に呑みこまれてしまうんですね。

ただ「それが面白いのか」は別の話。
要はファストフードで小腹を満たしたいときに入る店じゃあない、ということです。

そりゃそうですよね。
ハンバーガーで良いのにサーロインステーキを出されたら「勘弁」と言いたくなりますよ。

なので、これは僕のミスですね。
もっと映画を渇望するときに臨めば…うん。もう少し、評価が上がったかも。今の茹でた僕の脳みそには少し重すぎました。

だから、監督さんの想いも受け止められず。
現代社会における石油は「血液」と呼ぶに相応しいですから、考察に考察を重ねれば面白かったと思うんですが、頭を動かさなければ“醜悪な皮肉”にしか見えません。何事もタイミングですな。

まあ、そんなわけで。
石油王の半生を描いた物語。
感動も爽快さも知識が血液に馴染む感覚もなく。ひたすらに脂っぽいステーキを食べさせられる展開が続きますので、体調を万全にして臨むが吉です。中途半端な姿勢だと胸焼けすることでしょう。

ちなみに余談として。
本作を観賞していたら昭和40年代まで建設現場で死亡事故が多かった理由が分かりました。強度が足りない木材を櫓に使えば、そりゃあ壊れますわな。その結果が飛来落下事故。ヘルメットは大切ですね。
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