ハム

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのハムのレビュー・感想・評価

3.4
観てる最中、観終わってからも何を描いているのかとピンと来ずずっと思考を巡らせていたのだが、血に支配され人生を破滅まで追い込んだ独りの男の話だったのかなと。

最初から自分の利益の為なら手段を厭わない冷酷無比な男だったけど、息子と笑い合っていた彼の姿、ヘンリーとの会話で垣間見えた弟に向ける優しさは嘘では無かったと思う。
私達は怒りに支配され頭に血が昇るとついカッとなって思ってもいないことを言ってしまう訳で、終盤シーンの「忌々しい捨て子め」と息子に暴言を吐き捨てるシーンやボウリング場での撲殺はそれの最たるものだと思う。多分ダニエルは自分ではもうどうにもならない所にまで来ていて、最後のセリフ「I'm finished.」は「私は終わりだ」というより「ああ、やっと終われる」という事なんだと思った。

彼の場合石油とお金だけを求めて進み続けていたが、人を突き動かす程の熱いエネルギーというのは一歩間違えれば怒りと同等のコントロール出来ない狂気的なものになり得るということで、成功と破滅は常に隣り合わせなのかなと思った。

劇伴もとても印象的で冒頭のシーンなんかは「2001年宇宙の旅」を思い起こさせる。

ダニエル・デイ=ルイスもポール・ダノも出演作を初めて観たが、両者とも印象的な演技で良かった。
ハム

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