アキラナウェイ

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

4.3
監督の名前で映画を選ぶ事はあまりしないけど、ポール・トーマス・アンダーソンだけは別。

「マグノリア」がオールタイムベスト。
「ブギーナイツ」も最高。
いつしかPTAの魅力にハマって20年。

本作と「インヒアレント・ヴァイス 」をレンタルしてきたので、これにてPTA監督作品はコンプリート!

1898年。

石油を掘り当てようとする男が1人。

もう、その作業の様子から目が釘付けに。
金を掘り当て、それを資金に設備を整えまた石油を探す。

1902年。

地中から湧き出る石油。
ついに夢を掴み、更に次の採掘地を探す。

その男の名はダニエル・プレインヴュー(ダニエル・デイ=ルイス)。これは石油に取り憑かれた男の強欲の果てを描く物語。

ここまでの14分半、台詞なし!
心を掻きむしる弦楽器の音楽と共に、何という映像の説得力!

「ファントム・スレッド」と同じく、これはダニエル・デイ=ルイスの独壇場。

1人の男を深く深く掘り下げて。
その演技はやがて猛々しく火柱を上げて燃え上がり、観客を魅了する。

本作で石油を掘り当てた櫓(やぐら)が燃え上がる様に。

紅く、黒く、燃え上がる炎。

ダニエル・デイ=ルイス、凄い!!

飽くなき欲望は、あらゆる土地と人々を飲み込みながら、然しながら彼は人を遠ざける。苦楽を共にした息子でさえも。

完全にダニエル・デイ=ルイスの独り舞台でありながら、もう1人のキーパーソンは間違いなくポール・ダノ。

嗚呼、何故いつもこうもボコボコに殴られる役が似合うのか、ポール・ダノよ。ダニエルに翻弄される若き神父イーライを好演。

ダニエルが罪人なのか。
イーライが偽預言者なのか。

強欲の果てに、神をも恐れぬ男が神父を跪(ひざまず)かせる。

もう、ラストシーンが俊逸過ぎてゾクゾクする!!

ポール・トーマス・アンダーソン作品は、群像劇やとっちらかったストーリーラインの作品が特徴的だけど、本作や「ファントム・スレッド」の様にただひたすら1人の男を掘り下げる様な作品もまた魅力的。

泉の様に、石油の様に、欲望が湧き出ずる彼の行く先には必ず血が流れる。それでも彼の欲望は火柱を上げて燃えている。