かや

ボビー・フィッシャーを探してのかやのレビュー・感想・評価

4.0
勝負において重要なのは"勝つ"ことなのか?

野球が大好きな少年のジョシュ。ストリートチェスに魅せられ、やってみたところ並外れた才能を発揮する。それに気付いた父親はかつてチェスの名手と謳われたブルースにコーチを依頼するが…

タイトルのボビーフィッシャーとは、アメリカ人史上初めてチェスの世界チャンピオンになった実在の人物。

本作は天才的なチェス少年を主人公にした、子どもの成長や感情の物語であり、大人の成長の物語でもあり、大人の子どもに対する接し方の物語でもある。
つまりは「教育」というものが最も大きなテーマとして存在していると思う。

自分の子どもにとてつもない才能があると知ったとき、親は心躍らせるだろう。
しかしその道を強制していいのか?
それに挫折したときはどうするのか?
それに偏るのはどうなのか?
歓喜の裏には葛藤が生まれる。

ジョシュには、負けさせた相手を思う気持ちがあり、傷つけたくないことを理由にわざと負けたりもする。
そのうえ、勝ち続ける宿命を背負うなら、負けてもいいと思うことがある。
しかし目指すのは頂点。
彼にも才能の裏に葛藤が存在している。

子どもながらに感じている、周りの大人たちの自分に対する期待を裏切りたくはないという、親への愛。
親やコーチといった大人の期待や不安などが入り交じった純粋な子への愛。


すべての要素で常に「真逆」なものを見せることで、実に分かりやすい対比構造が生まれており、すべてのキャラクターの感情、葛藤が恐ろしいほどに伝わってくる。
これこそが本作の最も素晴らしい点であり、ここだけで十分に満足できるだろう。
ボビーフィッシャーの実際の映像を挟む演出も、ジョシュと対比できて素晴らしい。

勝つことだけがすべてではない。
相手をリスペクトし、優しさを持って挑むことで、勝敗では得られない強さと心を手に入れるジョシュ。
彼はボビーフィッシャーに憧れていた少年だったが、ボビーフィッシャーを越える人間に自ら成長していくのである。

チェスの天才少年の心と繊細な家族の絆を描いた素晴らしい作品でした!