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サムライのtakatoのレビュー・感想・評価

サムライ(1967年製作の映画)
4.1
 幻の傑作がついに再DVD化したので視聴。ジョニー・トーやジョン・ウーといった香港ノワールの人々に多くの影響を与えた巨匠メルヴィルの代表作。opのシークエンスだけで、この作品の特徴はハッキリと表れている。壁紙剥き出しで、籠に入った小鳥以外何もないようなくすんだ部屋、一人煙草を燻らすアランドロンを遠目+フィックスで淡々と撮り続ける。強調された格好付けや、解かりやすいロマンティックさなど甘い要素は一切なし。冷たく、無駄をそぎ落とした、計算し尽くされたショットの美しさ。

 主役のアランドロンも全く同じである。台詞は殆どないだけでなく、冷たい無表情を殆ど変えるず、淡々と仕事をこなしていく。かといって、殺人ロボットですよ~、不気味でしょ~というようなあざとい演出など一切なし。彼の全ショットは、計算された緊張感に満ちている。アクションもサムライの切り結ぶ瞬間のごとく一瞬に集約されている。

 ただ、自分としてはあまりに全編クールすぎて、もうちょっと燃える瞬間とか、話が大きく動く展開が見たかったかな。
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