チッコーネ

サムライのチッコーネのレビュー・感想・評価

サムライ(1967年製作の映画)
4.0
一匹狼な殺し屋の知られざる生活を追った映画と言えば、ウォン・カーウァイの『天使の涙』が思い浮かぶのだけど、その30年前に作られた本作にも、同様な見応えが充分。「冷たく寒々しいからこそ、よく眠れそうな居室」を、冒頭から見せつけられただけでもゾクゾクした。

殺し屋の冷徹な仕事の進め方、そして彼を追う警察の踏み込んだ捜査を描くのに充分な時間を割いているため、感情より手法の相克を覗き見たい好奇心さえあれば、退屈しないことは請け合い。

大胆不敵でありながら、冷静沈着。孤立無援で、痛みに強い。女に優しく、借りは必ず返す…、これが欧州人の目から見た侍の理想像だろうか。
そのすべてを次々と満たしながらも、少年のように澄んだ瞳を持つアラン・ドロンのどこか儚げな美しさが、映画をさらに魅力的にしていた。