ろ

ベルリン・天使の詩のろのレビュー・感想・評価

ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)
5.0

僕は今知っている、どんなにすごい天使でも知らないことを...


『「永遠に」ではなく「今だ!」と言いたい。「ああ」「おお」と感嘆の声を上げたい。「アーメン」ではなく...』
天使ダミエルは長い間いろんな人間を見守ってきた。そして、サーカスの曲芸師マリオンとの出会いを通し、人間への憧れが強くなっていく...

母親が亡くなった人、恋人に別れを告げるのに悩んでいる男性、頭を打ち付けた囚人、お金に困っているおばあさん。そして、その状況を劇的に変えることは出来ないけれど、人々の気持ちに寄り添う天使。この映画にはたくさんの人の思いが登場します。

印象的だったのは地下鉄の場面。
家族に見放された男性が下を向いて落ち込んでいる。「俺は負け犬だ。何で生きているんだ」と辛い様子。しかし、天使が彼の肩に手を置くと、「でも俺はまだ頑張れる。自分に負けちゃだめだ」前を向き、目には力が宿ります。天使は安らぎと喜びをもたらす存在なのです。

さらに天使から人間になってすぐ、道行く人に話しかける場面。「これは何て言うの?あれは何色?」何も感じることの出来ない天使から人間になれた喜びと好奇心が爆発!ダミエルの嬉しそうな顔を見ると、幸せな気持ちになりました。
また、「この世界のすべてを知りたい!教えてくれ!」とワクワクするダミエルにピーターフォークが一言。「自分で見て味わうのも楽しいぞ!」


『子どもは子どもだった頃
特に何も考えず、写真を撮る時も自然な表情のまま
子どもは子どもだった頃
人々が美しく見えたが今はその感性が消えた』

サーカス小屋は子どもたちでいっぱい。
ライオンやニワトリの格好をした団員が様々な技を披露。そのたびにみんなワッと歓声を上げ、手を叩いて喜ぶ。たくさんの風船が宙を舞い、子どもたちが駆け寄り、風船はバンっと音を立てて割れる。
映画に出てくる子どもたちのように、人間になったばかりのダミエルのように、私も昔はすべてが新鮮で驚きの連続で楽しくて仕方なかったはず。「子どもの頃に見た世界がなぜ見えなくなるのか」童心に戻って弾けることも必要。世界はもともときらきらしているんだ。濁ったガラスを通して見るにはもったいない。

何度も繰り返し 味わいたい作品に出会えました。
ろ