少し前に観たドキュメンタリー、
"ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ"は
好きな'音楽もの'だからというのもあったけれど、素人目にも編集が素晴らしいなと思った。
"パリ・テキサス"では、荒野をトボトボ彷徨うトラヴィスに切なさの極みを見せつけられ、どうしようもない男のやるせなさを知った。
ヴィム・ヴェンダースがすごい監督というのはわかっていた。
ずっと気になっていたけれど、、
よし、今だ! 満を持して再鑑賞。
誰かに宛てた手紙なのか、日記なのか、思いを綴る独白のようなプロローグ。
学生時代、第2外国語がドイツ語だったので、懐かしい響きと文字。
モノクロの画面からは、人々の心の声が聞こえる。
電車の中で
車の中で
図書館で
サーカス一座のテント小屋で…
本音と建前、思い悩む人々。
そんな人間に寄り添う天使達。
そう、ベルリンには見えないけれどたくさん天使達がいて、人間を見守っていた。
東西冷戦時代のドイツ・ベルリン。
人間に憧れる天使ダミエル役のブルーノ・ガンツが素晴らしい。
彼のことはヒトラー役を観てからすっかり嫌いになってしまったのだけれど(それだけ演技が素晴らしいということ!)、この役は素敵だった。
ダミエルと同じく天使のカシエル(オットー・ザンダー)が向こう側へ行きそうで行けなくて、、
ダミエルの憧れる人間の女性、空中ブランコ乗りのマリオン(ソルヴェーグ・ドマルタン)が美しいこと!
途中のニック・ケイヴのライブにはびっくり!ぶっ込んで来るな…笑
めちゃくちゃカッコよかったけど。
ライブ会場で何故か日本人の女の子達、日本語のセリフ。東京、京都、、?
監督、日本贔屓なのか?
ピーター・フォークが本人役で出てくるのだが、このキーパーソンがまた良い味を出すんだ!
この人の役割がわかった時、"なるほど!"
と心から腑に落ちたので思わず声を出してしまった。
それまで結びつかなかったパーツがぜんぶ繋がった感じ。そういうことか。。
少しクセがあるんだけど、味わい深いコーヒーのような作品。
大人だけにわかる人生の深みをヴィム・ヴェンダース特有の表現で見せてくれる。
昔観た時はさっぱり良さがわからなかったなぁ。。子どもだったのかな、きっと。
モノクロの世界からカラーの世界に踏み出した、ダミエルの表情の変化!
同じ俳優か?と思うほど。。
永遠の命も、傷つかない心も、体もいらない。見ているだけはもう嫌なんだ。
痛みも、寒さも、匂いも、色も。
生活、重さ、リアリティ。そして、愛も。全てそのままを、感じたい!味わいたいんだ。。
それこそが人生!
いかにもドイツらしい。
いかにもヴィム・ヴェンダースらしい。
素敵な作品にまた出逢えた!
MEMO(素敵だったセリフの備忘録)
一人でも人といても私は寂しくなかった。
寂しさを感じたかった。
寂しさって自分を丸ごと感じることだから。ようやくそれが言える。
偶然はおしまい。
私は決心している。
by マリオン