あーさん

ベルリン・天使の詩のあーさんのレビュー・感想・評価

ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)
4.1
少し前に観たドキュメンタリー、
"ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ"は
好きな'音楽もの'だからというのもあったけれど、素人目にも編集が素晴らしいなと思った。

"パリ・テキサス"では、荒野をトボトボ彷徨うトラヴィスに切なさの極みを見せつけられ、どうしようもない男のやるせなさを知った。

ヴィム・ヴェンダースがすごい監督というのはわかっていた。

ずっと気になっていたけれど、、
よし、今だ! 満を持して再鑑賞。



誰かに宛てた手紙なのか、日記なのか、思いを綴る独白のようなプロローグ。
学生時代、第2外国語がドイツ語だったので、懐かしい響きと文字。


モノクロの画面からは、人々の心の声が聞こえる。

電車の中で
車の中で
図書館で
サーカス一座のテント小屋で…

本音と建前、思い悩む人々。
そんな人間に寄り添う天使達。

そう、ベルリンには見えないけれどたくさん天使達がいて、人間を見守っていた。

東西冷戦時代のドイツ・ベルリン。

人間に憧れる天使ダミエル役のブルーノ・ガンツが素晴らしい。
彼のことはヒトラー役を観てからすっかり嫌いになってしまったのだけれど(それだけ演技が素晴らしいということ!)、この役は素敵だった。
ダミエルと同じく天使のカシエル(オットー・ザンダー)が向こう側へ行きそうで行けなくて、、

ダミエルの憧れる人間の女性、空中ブランコ乗りのマリオン(ソルヴェーグ・ドマルタン)が美しいこと!

途中のニック・ケイヴのライブにはびっくり!ぶっ込んで来るな…笑
めちゃくちゃカッコよかったけど。
ライブ会場で何故か日本人の女の子達、日本語のセリフ。東京、京都、、?
監督、日本贔屓なのか?

ピーター・フォークが本人役で出てくるのだが、このキーパーソンがまた良い味を出すんだ!
この人の役割がわかった時、"なるほど!"
と心から腑に落ちたので思わず声を出してしまった。
それまで結びつかなかったパーツがぜんぶ繋がった感じ。そういうことか。。

少しクセがあるんだけど、味わい深いコーヒーのような作品。

大人だけにわかる人生の深みをヴィム・ヴェンダース特有の表現で見せてくれる。

昔観た時はさっぱり良さがわからなかったなぁ。。子どもだったのかな、きっと。


モノクロの世界からカラーの世界に踏み出した、ダミエルの表情の変化!
同じ俳優か?と思うほど。。

永遠の命も、傷つかない心も、体もいらない。見ているだけはもう嫌なんだ。
痛みも、寒さも、匂いも、色も。
生活、重さ、リアリティ。そして、愛も。全てそのままを、感じたい!味わいたいんだ。。

それこそが人生!

いかにもドイツらしい。
いかにもヴィム・ヴェンダースらしい。


素敵な作品にまた出逢えた!













MEMO(素敵だったセリフの備忘録)










一人でも人といても私は寂しくなかった。
寂しさを感じたかった。
寂しさって自分を丸ごと感じることだから。ようやくそれが言える。

偶然はおしまい。

私は決心している。

by マリオン
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