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ベルリン・天使の詩のレクのレビュー・感想・評価

ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)
4.7
争いの絶えない人間を見放した神と人間に寄り添うことを選んだ天使たち。
戦禍の負の遺産、分厚い壁が残るベルリンを舞台に不死である天使が人間の女性に恋をして定命の人間になる決心をする。
時という概念を人の心情と重ね合わせ詩的に魅せる人間賛歌。

天使達は人間の歴史が始まる遥か前から地球のことを知っている。
そんな時間と比べれば、人間の歴史なんて一瞬のようなもので、その近い時間の中で人間は争いながら生きている。
天使達にとっての人間は愚かな生き物に映るだろう。
しかし、天使の中にはそんな愚かな生き物である人間になりたがる者もいる。

『時が癒やす?時が病気だったらどうするの?』
この言葉が全て。
人間には他人を想う心があり、相手を想うが故に傷つけることも傷つくこともある。
また、争いによっても心が満たされたり、相手を傷つけたりする。
時間が経てば自然とその傷が癒えるものではなく、時には時間の経過が人を苦しめることもある。
その時間の中で人は何を想い、何をするのか。

戦争の傷跡が色濃く残るドイツを分断するベルリンの壁を天使と人間、つまりは人種間の境界線として明確に示す。
天使の傍観するモノクロ世界と人間視点のカラフルな街並みの対比は人間への憧れの可視化であり、恋愛の根底にあるのは有限の中に見える自由への希望なのだろう。
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