高橋早苗

ベルリン・天使の詩の高橋早苗のネタバレレビュー・内容・結末

ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

2019年ノーベル文学賞を受賞したペーター・ハントケ氏書き下ろしの詩が、全篇に織り交ぜられた作品。
…スクリーンに映るものを、全くの他所事ではなく、我が身を映して観た初めての一本

“ロングコートのおっちゃん”天使を
ある時は、師になぞらえ
ある時は、見えない存在と崇め
ある時は、私自身に重ねて観ていた



天使は 世界の至るところにいる
 
街角で 幸せなキスをする恋人たち
電車の中で 職を失ったと嘆く男
救急搬送される 妊婦
夫婦喧嘩している二人
ビルの屋上から 飛び降りようと身を乗り出す男
バイク事故で 意識を失う男

そして 見えなくとも
天使の存在に気づく 子どものそばに

この映画を好きになる、あなたのそばにも。

『ただ見守り 集め 証言し 守るだけでいい』
という 天使カシエルとは違い

天使ダミエルは
『霊でいることは 素晴らしい』と思いつつ
霊でいることに うんざりもしている
そんな彼が サーカスのブランコ乗り マリオンに恋をした

☆☆★

東西冷戦の象徴・ベルリンの壁が
まだ存在していた頃のベルリン

『歴史の一部になる
 流れに降りてこそ 瀬があるのだ』と"死んで"人間になる 天使
彼も 知らずに流した赤いものに気づき 眺め 舐めて
『これか!』と実感する

身体がある という事実に。

ダミエルは 愛しの人を探す
空飛ぶ飛行機の中へも 街を分断した壁も
自由に通り抜けることなど できなくなったその身体で


一方マリオンは ブランコ乗りの道をなくし
夢で見た”誰か”の感触と ふと感じるやすらぎと
誰かを探している感覚だけを持ちながら
ダミエルと出逢う

『今しか 時はないわ』という独白と共に

天使と 人間
身体を 持つ世界と 持たない世界
死を境に それは描かれる


そして ここまで私たちを導いてくのが ピーター・フォーク(!)
『ぼろコート着てない』コロンボが ダミエルに語りかけるように
このスクリーンを眺める私たちをも導くのですよ
『君と話せたらいいのに』ってね

★★☆

初回の上映は逃し、DVDを何度となく観続けた。

天使たちが 人間の声を聴く図書館と
人間になったダミエルの
“初めてのコーヒー”シーンにやられて
(大好きで、何度でも観たくて
 一晩中、何度も何度も繰り返して
 朝になっても、まだ繰り返してたw😊)

仙台でリバイバル上映を
今年2019年5月、Bunkamuraル・シネマでの特別上映を。
仕合わせな夜でした♪
高橋早苗

高橋早苗